2002年12月24日火曜日

動物達の音楽会 Vol.2 より ヴィヴァルディの「ごしきひわ」

日時:2002年12月23日 13:30~ 
場所:札幌ザ・ルーテルホール
ピアノ:曽根田正美、瀬尾珠恵、落合一絵 
ソプラノ:小出あつき 
フルート:河崎亜希子 
ピアノ:落合一絵 
ヴィヴァルディ/フルート協奏曲 二長調 Op.10 第3番「ごしきひわ」 第一楽章 アレグロ、第二楽章 カンタービレ、第三楽章 アレグロ 

知り合いのフルーティストが出演するということで、コンサートに行ってきた。「動物たちの音楽会」というテーマで、3人のピアニストがそれぞれ交代で、テーマに沿った曲を披露するというもの。フルーティストの河崎さんは賛助出演ということである。 

曲目は、チャイコフスキーのオープニングにはじまり、ラヴェルの組曲「鏡」、ソプラノによるプーランクの小品、ドビュッシーやフォーレ、サンサーンスなどなど。ショパンのワルツなども演奏されたが、フランス系の曲の多い構成であることが目をひいた。(残念ながら最後までは聴かれなかったのだが) 

そんな中にあって、河崎さんと落合さんによるヴィヴァルディの「ごしきひわ」は、ひときわ生き生きとした音楽を私たちに与えてくれたように思える。フルートの清冽で煌びやかな音はホールを満たし、爽やかな聴後感を残してくれた。 

「ごしきひわ」とは小鳥の鳴き声を模した音楽が三つの楽章を通して聴こえてくる曲だ。最近では高木綾子さんが「イタリア」というCDで録音していることでも(その筋では)有名である。 

この曲の特徴は、何と言っても装飾音符に飾られた小鳥の鳴き声を、いかにそれっぽく聴かせてくれるか、そして途中のカデンツァやソロ部分をどう表現するか、ということがポイントだと思う。河崎さんの笛の音は、演奏の最初からピンと張り詰めた輝かしい音を会場に漲らせ、トリルと物凄く速いタンギングにより表現された音は、朝の輝かしい光の中でさえずる小鳥を、まさに彷彿とさせるものであった、と書いたら言いすぎか?
細かなパッセージでのピアノとフルートのアンサンブルも絶妙で、彼女の耳のよさとフルートの運動性能良さには改めて感服した次第。
おそらく今日の演奏会の客層から考えると(ピアニストの生徒さんとそのご家族か?)、フルートにはあまり馴染みのない方が多かったのではないかと思う。そういう中で、第一楽章のアレグロが始まった後にすぐ現れるソロ部分での彼女の笛の歌いと音色は、その瞬間に実に見事で聴衆の心をつかんでいたと思う。
中間のカンタビーレ楽章での装飾の入れ方や歌い方には、おそらくは彼女らしい表現を感じることができた。第三楽章のラストに向かっての駆け抜けてゆく爽快感もなかなかのもので、最後の上昇音形を挿入して颯爽と終わるあたりは、高木綾子さんのアルバムよりも良いなあと感じさせてくれた。終わって引上げる彼女の背中に向かって、客席の起こったちょっとしたざわめきが聴こえただろうか?
ルーテルホールというのは、行った人ならば分かるのだが、200人程度の小ホールであり、フルートのために建てられたホールと聞いている(オーナーもフルーティストであるとか)。しかしピアノソロを聴いていても感じたのだが、このホールにしてはスタンウィエイのグランドピアノの音量は、すこし響きすぎる嫌いがあるのではないかと思う。
実際にピアノの音はソロであっても非常に大きく聴こえた。ソプラノやフルートと合わせた時は蓋は全閉にしなくてはならないほどだ。ヴィヴァルディの曲にしても、そういう少し崩れたバランスと、そしてこの曲の原曲がピアノ伴奏ではない、ということを差し引いても、充分に楽しめる演奏であったと思う。
フルートの感想ばかりになってしまって恐縮であるが、彼女の笛を聴きに行ったのだし、ピアノの評は(恐ろしくて)うまくできないし、それに最後まで聴けなかったのでご容赦願いたい。ただ、プログラムとしてはとても楽しめる良い企画であったと思う。特に個人的には、ラヴェルのピアノを生で聴けただけでも、非常にうれしかったのであった。小出さんのソプラノも、歌っていいなあと思わせてくれるものであったし、瀬尾さんはまさに、司会も演奏も貫禄のといったところでしょうか(^^)
こういう演奏会は、肩肘が張らないので、もっとあっても良いなあと思うのであったよ。

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