2004年4月15日木曜日

映画:真珠の耳飾りの少女

「完璧(Perfect)」 いささか大上段ではありますが、私が画家フェルメールに抱いている気持ちです。その天才画家と「真珠の耳飾りの少女」という絵のモデル(グリート)とのドラマを描いたのがこの映画です。10日が封切でしたので早速観てきましたが、この映画を観た印象も、まさに「完璧」というものでした。

映画が始まると同時に、映画を通して流れるテーマ音楽がフルートに導かれて奏でられます。それだけで、もはや私はこの映画から眼を離すことができなくなりました。

フェルメールの絵画の最大の魅力は、部屋(アトリエ)の左側から柔らかに入り込むデルフトの光にあります。この映画を作った人たちは、よほどフェルメールを研究し、そしてフェルメールの絵を愛しているのでしょう。冒頭に書いたように「完璧」と映画を見ながら感心し、幾度となく画集を食い入るように眺めたあの絵が、3Dさながらにサイドからパンをして見慣れた構図に納まるカメラワークに、よくぞここまでと唸ってしまいました。

とにかく画家のアトリエと17世紀のデルフトの街の描写などが驚くほどの美しさで表現されています。電気のない時代の夜の描写も見事です。

唯一気に入らなかったのは、グリートがフェルメールを想いながら眺める空の色くらいでしょうか。フェルメールが「雲は何色か」とグリートに問いかけ、自ら答えるうちにフェルメールを理解し、そしてフェルメールもグリートを理解したという重要なシーンのあとの場面です。フェルメールの有名な「デルフトの眺望」でもそうですが、フェルメール感じた空の色ではなかったような気がします。

ストーリーの詳細は割愛しますが、フェルメールの家にお手伝いとして雇われたグリート、じきにグリートとフェルメールは暗黙のうちに心を通わせるようになります。それを眺める娘のコルネーリアの子供らしい悪意に満ちた策謀、嫉妬に乱れる妻カタリーナなどが描かれます。

フェルメールがグリートをモデルとして絵を描き始めたときに、真珠のピアスが不可欠であるとして自ら針でグリート耳に穴を開けるシーンは極めて官能的です。しかもグリートが付けるのはフェルメールの妻のピアスなのです。

それを知った後の妻カタリーナの演技も見もので、化粧気のない愛憎入り乱れた表情は女性の哀しさを背負っているかのようですし、出て行けとグリート命ずるところは凄絶です。

二時間弱の映画ですが、そういうわけで私にはあっという間に過ぎ去ってしまいました。映画館を出た後、しばらく実世界に戻ることができず浮遊するような感覚さえ味わってしまいました。

グリートを演ずるヨハンソンは、パンフレットなどで見ると非常に肉感的な印象で、フェルメールの絵の雰囲気ではないと実は心配していたのですが、映画ではそんなことは全然ありませんでした。機会があればもう一度観たいと思っています。

  • 監督:ピーター・ウェーバー
  • 原作:トレイシー・シュヴァリエ
  • 音楽:アレクサンドル・デプラ
  • フェルメール:コリン・ファース
  • グリート:スカーレット・ヨハンソン