2004年5月31日月曜日

佐々木幹郎:「やわらかく、壊れる」


詩人 佐々木幹郎の著書で「やわらかく、壊れる~都市の滅び方について」という本があります。その中で、昨日見てきた宮本隆司の中野刑務所に関する記述がみつかり、思わずはっとしてしまいました。

中野刑務所は後藤慶ニという建築家が設計し大正4年に完成した建物です。戦前戦中は政治思想犯専用の監獄で大杉栄も中野重治もここに収監されました。

佐々木氏は愛着のあまり解体中も現場に入り8ミリカメラをまわし続けたそうです。


解体工事の現場で、よく思った。
過ぎ去ったものをもっともよく語るのは、人間だろうか。
いや、そうではない、という声がどこからともなく聞こえてきた。
人間が語るのではなく、彼を閉じ込めていた空間がもっともよく語る。しかも、その残されていた空間が壊され、地上から永遠に姿を消す寸前の、廃墟が。


実際の風景はと見れば、そんな声など聞こうともせずに、機械的かつ無味乾燥に解体と再生は続いていますがね。

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