2005年2月21日月曜日

歌舞伎座:二月大歌舞伎~野崎村

歌舞伎座の二月大歌舞伎のうち、夜の部で演じられている新版歌祭文 野崎村を一幕見で観てきました。

この演目は、中村芝翫が14年ぶりにお光の役を演ずること、お染を雀右衛門、久松を鴈治郎、久作を富十郎、お常を田之助と人間国宝5人がも出演すること、ラストでは両花道を使った演出が見られることなど話題満載です。さらに、A Moveable Feastの書き込みを読んで「これを見逃すことができましょうか」という気になったわけです。


さて、そんな演目ですから期待いっぱいで観たのですが、一幕見席という高所からではあったものの、芝翫のお光、富十郎の久作など堪能することができました。




芝翫が舞台に当たって好きな久松との結婚が決まった喜びに包まれた前半は徹底的に明るく演じます。そうすることで、恋を譲って仏門入りを決意し、髪を切って現れる後半部分が自然に陰になりますと語っているように、前半と後半の変化が見ものです。芝翫は祝言が決まった喜びを、全身に表しており、遠くから観劇していても本当にかわいらしく、ちょっとそそかしい娘役を充分に演じて楽しませてくれました。それだけに、後半に彼女が身を引く場面やら、父親の久作の胸で泣き崩れるラストが引き立ちます。いやはや見事。


久作の鴈治郎も娘を思う父親役を充分に演じてくれ、また、台詞回しも一番聞き取りやすく、劇にしっか締めてくれていました。


お光の恋敵の雀右衛門お染は、お光とは全く異なる性格のお嬢さんという役柄で、心中さえ覚悟する我の強さ、女の一途さみたいなものを演じきっていましたね。お染の竹本に乗っての有名な「くどき」は確かに見ごたえがあります。あちこちから掛け声がかかりました。


竹本といえば、前半のお光の祝言を前にしたシーンですが、大根を切ってなますを作ったり、包丁で指を切ってしまったり、髪で眉を隠すしぐさをして一人照れたり、と非常に忙しいシーンなのですが、竹本の唄ばかりが響いて一幕見席までお光の声が届かなかったのは残念。

ちなみに芝翫は、この舞台のために包丁や、久作に据える灸のモグサ入なども自分で用意したのですとか。


最後の見せ場は、本花道を船で帰るお常とお染、仮花道を駕篭で帰る久松、中央の土手で見送る久作とお光が、それぞれの思いを乗せながら演ずるダイナミックな場面です。一幕見席からでは乗り出すようにしてやっと花道の先端が見えるばかりなのですが、それでも充分に豊かな歌舞伎空間を味わうことが出来ました。


そうそう、肝心の鴈治郎の久松ですが、この役にはほとんど台詞がなく、また動きも少ないため、初見の私には、遠くからでは演技がよく分かりませんでした(笑) やっぱり歌舞伎がよく分からないうちは、1階席とかで観劇するべきだと思いましたよ。