2006年1月13日金曜日

ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則



スタンフォード大学教授で企業コンサルタントとしても活躍している、ジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポピンズによる、6年間にもわたる膨大な企業研究から得られた本です。ビジョナリー・カンパニーという言葉は耳慣れませんが、・業界で卓越した企業 ・見識のある経営者や企業幹部の間で、広く尊敬されている ・私たちが暮らす社会に、消えることのない足跡を残している ・CEOが世代交代している ・当初の主力商品がライフ・サイクルを超えて繁栄している ・1950年以前に設立されているなど幾つかの条件を設定し、ビジョナリー・カンパニーと言える企業と、比較対象企業が本質的に違う点は何か、他のグループの会社と際立っている点は何かを、具体的に明らかにした本です。



企業で働く人にとっては多くの知見に満ちており、とても簡単に本書の内容を表すことなどできません。示された企業の生き様は、是非や賛否を超えて感動的でさえあります。(企業の挿話は、ちょっとした小説よりもずっと面白い)


印象に残った点を一点だけ書くとしたら「ビジョナリー・カンパニー」で働くことは、甘いものではない、ということです。第九章 決して満足しない、第十章 はじまりの終わり という章名を見ただけで、決してゴールなどないことが分かります。信ずるに足る理念と、それに向けての不断の改善を是とするタイプの人でなくては、到底勤まるものではないと思い知ります。


また本書では、ビジョナリー・カンパニーはカルトのような文化を有していると説明します。ノードストローム、IBM、ディズニー、P&Gなどの実例を出して、企業の成長過程においての、カルト的な性格の重要性を説明しています。IBMまでもがカルトのような企業文化を維持(P.212)していることには驚きましたが、著者はビジョナリー・カンパニーがカルトとだと言っているのではありません。しかし、


ビジョナリー・カンパニーは不安をつくり出し(言い換えれば自己満足に陥らないようし)、それによって外部の世界に強いられる前に変化し、改善するよう促す強力な仕組みを設けている(P.317 第九章 決して満足しない)


とあるように、不安を生み出して原動力とする点など、ほとんど新興宗教の手法とそっくりです、たまりませんね(^^;;


ここに選ばれたビジョナリー・カンパニー18社(日本ではSONYが唯一挙げられている)の中の幾つもの企業が「猛烈に働く」ことを社員に求めています。先に読んだジャック・ウェルチの場合もそうでした。時にカイシャ人間と批判的に語られる日本のサラリーマン像ですが、ガンガン働いている(いた)のは、何も日本人ばかりではなかった(ない)のです。アメリカの企業も社員に対し、仕事に没入することや生活の一部を犠牲にすることを強く求めています。違いがあるとすると、「選別」のシステムが発達しているため、合わなければ止める、変わるという選択の幅が広いという点でしょうか。個人の自由は保障され、結果に対しては自分で責任を取ることが自明のこととなっているようです。


今の日本はカイシャ以外にも、幸せや楽しいことはいっぱいあるよ、がむしゃらに働くだけが人生ぢゃないよ、という風潮になっていますが、本書を読むと、究極的には何のために働いているのか、人生をどう生きるのか、という自身に対する問いかけが隠されていいるように思えます。


哲学的なハナシはさておいたとしても、企業の存続や経営ということに興味がない人であったとしても成功している企業の特徴に関心があるすべての人(「はじめに」)にとって、何らかの(強い)示唆を与えてくれると思います。