2006年3月2日木曜日

ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第1番&2番/小澤&Zimerman

あちこちで絶賛されていた盤、去年買っていてiPodにも入れていたのですが、オリンピックも終わりましたし、このたびやっと落ち着いて聴いてみることとしました。

まずピアノ協奏曲1番の冒頭の打鍵の凄まじさに思わずのけぞります。激しいながらも暴力的ではなく、硬質なガラスが一気に砕け散るかのような爆発的美しさ。Zimerman弾くピアノの粒立ちは特筆もので、どこの断片を切り取ってもキラキラと何色にも光っています。表現も鋭利ではありますが、しかし演奏は少しも冷淡ではない。いやむしろ硬質な光の中に熱い火が隠されているかのようで、ヘタに触れるとやけどしそうなくらい。第1楽章はあっという間に過ぎてしまいます。

第2楽章は、打って変わって泣きたくなるほどに美しい。しかし表現は抒情と感情に溺れてはいない、適度に理知的にコントロールされた演奏は一線を越えることを踏みとどまります。

Allegro Vivaceの第三楽章は再びZimermanのピアニズムが弾けます。どこまでも曇りのない音色は快感と眩暈さえ覚えるほど、高度なピアノ演奏を聴く愉悦を充分に堪能できます。

続くピアノ協奏曲第2番の冒頭の和音の重いこと。低い重心から奏でられる音塊はまるで鉛のようでありながら、驚くべき機動性を発揮します。実に強靭なピアノニズムです。この通俗名曲に近いメロディーから、こんな迫力を生み出すとはっ!重さと軽さ、深刻さと軽やかさを自在に行き来しながら、バックでは小澤のボストン響が端正かつ、きっちりと抑えています。出すぎてこないところが好ましい。

これまた第2楽章が夢見るほどに美しい。ゆったりとしたピアノのアルペジオを聴いているだけで、静かな別世界で悠久の時を思うかのよう。チャイコフスキーの交響曲第5番の第2楽章を彷彿とさせるロシア的ロマンティシズム。第3楽章はもはや文句なし、ラストなどカッコ良すぎて惚れ惚れ。

言葉野遊戯」というブログで

このラフマニノフの旋律をピアノで表現するのって、高貴さが必要。

気品が感じられないと、それはまるでR・クレイダーマンのショウを思わせる(^^;)、

と書かれているますが、一方で逆の方向で間違えると泥臭くなったり土砂降りの演奏になりかねない。泣き崩れないリリシズムこそがラフマニノフには美しい、そしてそこがチャイコフスキーとは一線を画するところだと思うのです。

しかし、ここまで「褒め殺し」のような書き方をしましたが、アシュケナージの名盤と聴き比べてみると、私はアシュケナージの演奏の方を好ましく感じます。それが何故なのか、その差異を表現する語彙を私は持ちません。