2006年4月11日火曜日

中島義道:私の嫌いな10の言葉



書店に行くと「私の嫌いな10の人びと」というタイトルの本が。ありがちな有名人批判本かなと思って手に取り目次をながめたら、中島氏の嫌いな人とは1 笑顔の絶えない人 2 常に感謝の気持ちを忘れない人 3 みんなの喜ぶ顔が見たい人 4 いつも前向きに生きている人 5 自分の仕事に「誇り」をもっている人・・・なのだとか。


目次を見たただで何だか感ずるところがあり、それでも誰だか分からない人の本に1260円も払うほどのこともなかろうと文庫棚に移動し、氏の類似書である本書を購入した次第。




で、氏の嫌いな10の言葉とは、1 相手の気持ちを考えろよ! 2 ひとりで生きてるんじゃないからな! 3 おまえのためを思って言ってるんだぞ! 4 もっと素直になれよ! 5 一度頭を下げれば済むことじゃないか! 6 謝れよ! 7 弁解するな! 8 胸に手をあててよく考えてみろ! 9 みんなが厭な気分になるじゃないか! 10 自分の好きなことがかならず何かあるはずだ!なんだそうです。


青春ドラマや家族更正ドラマ、あるいは新入生相手の会社ドラマのような安っぽい台詞の羅列で冒頭から少々ゲンナリです。それに改めて考えてみると、私は氏のような言葉を人から頻繁にかけられたことは、ここ十数年に限って言えばありませんし人に言ったこともありません。

もっとも、それは中島氏的に言えば「大人になった」ということなのです。未だに中島氏が、このような言葉を生み出す環境にいるとしたら、彼も周りの人もやりにくいだろうなと。


という具合に、最初は批判的に読んでいたのですが、氏の指摘は日本の文化的なありように鋭く切り込んでいるもので、捨てきれない面も多く感じます。氏はマイノリティとマジョリティに対する考え方、一方的な「善意」のもたらす暴力、「集団」が無意識のうちに示す残酷さ。「全体」のエゴと「個」のエゴの関係性などを鋭く喝破し、日本においては個人が主体的かつ個人的な言葉を発することを抑えられているというこを、筆致鋭く指摘しています。


人によっては、読むとかなり「不快」になりますが、その「不快度」の高さが逆に自分の立ち位置を教えてくれるかもしれません。