2006年6月23日金曜日

町田康:へらへらぼっちゃん


町田氏のエッセイ集です。彼が「くっすん大黒」を発表したのが1996年のこと、ここに収録されているエッセイは1992年からのもので、彼が小説家としてデビューする前の文章であるという点で興味深いものです。


内容は彼の小説世界そのままで、内装業者友達の世話による「ペンキ塗り」や「冷蔵庫」に関する逸話も、彼の体験に基づいたものであることが理解できます。


それにしても不思議なのは、3年間も働かずに昼間から酒を飲み時代劇を見続けるという生活を続けながらにして、人間的にも家庭的にも破綻しなかったという驚くべき彼の持続性。





何もしないで遊び呆けることの難しさ。彼の処女小説「くっすん大黒」が上梓されることになるに当たって、


私はこの本を、これから就職する人や仕事をやめてぇ、と思っている人に読んで欲しいなあ、と念願している。(「遊びの苦しみ」P.227)


なんて書いています。彼の「遊んで暮らす」というのは筋金入りでして、その覚悟はあるかと。


なにしろ当方は、必死になって何もしないで遊んでいようとしているわけだから、昼酒を飲んでみたり、再放送のテレビ時代劇を日に五本も見たり、都々逸の稽古をしてみたり、木桶に飯と菜を盛って、犬のように手を使わずに食ってみたりと、いろいろ試しているのである。(「旅人・遊び人」P.13)


なんだそうであります。ココだけ読むと、キの印としか思えないのですが、まあそれが町田康なんですねぇ。


町田小説にどっぷりつかってしまった人には、彼のルーツが分かるようなエッセイでもありまして、ビール飲んだりハム食ったりしながら、芝清之編「東西浪曲大名鑑」、坂口安吾「明治開花安吾捕物帳」、八剣浩太郎「大江戸愛怨伝」、織田作之助「江戸の花笠」なんて読んでいるんだものなあ、そうか、そうか、やっぱりそうであったか、なんてね。思ったりするわけです。


大槻ケンヂの巻末の解説も抜群。


ここで、ふと思ったけれど、彼の小説の読者層というのは、やっぱり十から二十代の若者なんではなかろうかと、いい大人が「町田康はオモロイ」なんて書いているのは、もしかすると、間違っているかもしれない・・・。場違いなライブハウスにスーツ着て聴きに行ったような、恥ずかしい違和感。そろそろ町田巡りもオシマか?しかし・・・町田本を読むのを止めたら、次は誰に熱中できるというのだ?