2006年10月22日日曜日

江戸東京博物館:ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展~江戸の誘惑

江戸東京博物館で開催されている「ボストン美術館所蔵 肉筆浮世絵展~江戸の誘惑」を観てきました。日本初公開の作品も多くあり、浮世絵の世界の広さと素晴らしさを充分に堪能できる展覧会であったと思います。出典作品には北斎や歌麿などの有名どころの作品を始めとして、約80点ほどの肉筆浮世絵(版画と違って1点しかない)は市井の雰囲気を充分に伝えて余りあります。


様式美と執拗な技法によって描かれた女性の着物の柄など、近くで見ると驚嘆に値します。浮世絵には私は馴染みが少ないので誰の絵が良いとかいう興味よりも、江戸時代の雰囲気というのでしょうか、江戸の美学というものを、ぼんやりと感じることができました。


浮世絵を見て一番感じたことは、柔らかさでした。人間が全て「遊」の中に住んでいるという余裕。封建的な身分制度は厳として存在していながらも、その階級の中でそれぞれが粋に生活を楽しむ。鎖国によってもたらされた幕府の安定政権は、こんなにも人の心をのんびりと、そして豊かに、さらには享楽的にしたのかと。(もっとも、ここには圧制に苦しむ農民や地方の人々の生活は全く描かれていません。)


例えば下の鈴木春信の絵を観たときに感じる幸福感。着物が作り出す曲線が非常に幾何学的な構成で、かつ優美さが画面全体から溢れています。浮世絵に特徴的な女性の見返りの姿も、頭に被る笠のラインも、どこまでもうらかかで幸福な世界を描ききっています。


鈴木春信
「隅田河畔春遊図」



歌川豊春の行楽図もしかり。実生活はイロイロ大変なんでしょうが、画面からは何の不安も不満もない人々の幸せな雰囲気が伝わってきます。


歌川豊春
「向島行楽図」



江戸時代の日本は、こんなにも薄ぼんやりと、そして幸福であったのかと愕然とする思いです。


重そうだったので2200円の図録は買いませんでしたが、12月10日までの開催ですから、もう一度くらいは行っておこうかと思っています(>と言いながら、行った試しはないのですが・・・)