2007年6月11日月曜日

ガッティでストラデッラのオラトリオ《スザンナ》を聴く


エンリコ・ガッティとアンサンブル・アウロラがGLOSSAレーベルに初録音した、ストラデッラの《スザンナ》を聴いてみました。ガッティの演奏を聴きたくて買った盤でしたが、聴いてみれば曲そのものも、ストラデッラも興味深く、一度聴いただけでCD棚に納めるのがもったいないと思える作品です。ということで、防備録的に調べたり感じたりしたことを書いておきます。(モトネタはネットとCDブックレットという安易さです)

本CDと、オラトリオの解説、それにストラデッラの生涯について、クラシック通販ショップ「アリアCD」に詳しいので、興味のある方は、まずそちらをご覧になると良いと思います。

(→http://www.aria-cd.com/oldhp/yomimono/vol25.htm)




  • Emanuela Galli (Soprano - Susanna)
  • Barbara Zanichelli (Soprano - Daniel)
  • Roberto Balconi (Countertenor - Narrator)
  • Luca Dordolo (Tenor - Second Judge)
  • Matteo Bellotto (Bass - First Judge)
  • Enrico Gatti (Violin - L. Storioni, Cremona - 1789)
  • Claudia Combs (Violin - S. Klotz, Mittenwald - 1746)
  • Gaetano Nasillo (Cello - B. Norman, London - ca. 1710)
  • Giancarlo de Frenza (Double Bass - G. Sgarbi, Rome)
  • Loredana Gintoli (Double Harp - Thurau - 1990, aft Domenichino)
  • Anna Fontana (Harpsichord - R. Mattiazzo, Bologna - 1987)
  • Francesco Baroni (Organ - F. Zanin, Codroipo - 2000)
  • Glossa GCD921202M

ストラデッラについて


ストラデッラ(1644-1682)は17世紀イタリアで活躍した作曲家ですが、その浮気性のため殺し屋につけ狙われ、遂には暗殺者の刃で命を落とすという放蕩人生を送ったことで有名です。そこから「ストラデッラ伝説」が生まれ、彼の生涯そのものがオペラや小説、詩などの題材にされたりしています。

その生涯はかなり脚色されているようで、実際のところは不明な点も多いらしいのです。音楽よりも生涯が有名とは言え、彼は「1670年代のイタリアで最も優れた音楽家」でありましたし、その功績はコンチェルト・グロッソ(正式にはコレッリのOp.6が当様式の最初の作品とされている)や、レチタティーヴォに弦の伴奏を付けるなど、音楽的イノベーションにも加わってたそうです。(→日Wikipedia

《スザンナ》について


《La Susanna》はオラトリオです。従って聖書を題材としているのですが、ストーリーはかなり性愛的なものに偏った内容になっています。
《スザンナ》は旧約聖書《ダニエル記》補遺的に記載された逸話。スザンナといえば純潔の象徴。物語を簡単にまとめると以下のようなもの。

美しいスザンナが沐浴しているときに、二人の長老二人が覗き見をし関係を迫る。スザンナは当然に拒絶。逆恨みした長老たちは、スザンナを逆に姦通罪で訴える。牢獄の中でスザンナは神に助けを求める。すると預言者ダニエルが現れ、二人の長老を尋問し矛盾を暴く。スザンナの無実が実証され、二人の長老は死刑とる。


まあ、自分の生涯をさておいて、いかにもストラデッラ的なテーマです。

バロックの世にあって、一般大衆には官能的なものと宗教的なものが一体となって表現されることに規制はなかったようです。このCDのカバーに使われているのは、16世紀から17世紀に活躍したカラヴァッジオ派の女性画家アルテミジア・ジェンティレスキ(Artemisia Gentileschi)による《水浴のスザンナと老人たち(Susanna ei Vecchioni)》。彼女18歳のときの最初の作品です。にしても好色な長老たちです・・・。(→日Wikipedia)




スザンナは画家たちにとっても興味深い甘美な対象であるのか、かのレンブラントも何作か描いているんですよね。例えば下。流石にレンブラントだけあって格調高いですが、結局はエロヲヤジのレイプ未遂というわけで(→解説はこちら Salvastyle.com)。宗教を題材として、それを隠れ蓑に女性の裸を描き眺めていたというワケですな。



こちらはイタリアのバロック時代の画家Guercino(1591-1666)によって書かれたスザンナ。こちらの方が好色じみたエロヲヤジの姿を的確に捉えていますね。



下のスザンナの方が有名でしょうか。ティッツアーノと並ぶルネサンスの代表的画家 ティントレット(1518-1594)のスザンナ。スザンナがエロティックです。禿ヲヤジの視線がいかにもイヤらしいですね。高校時代、こんな絵を観てドキドキしたことを思い出します。



スザンナが誘惑的なポーズであっては、本オラトリオは成立しません。やっぱりイタリア・バロックの画家であるGuido Reni(1575-1642)のスザンナが一番でしょうか。驚きによって目を見開いたスザンナ、いかにも悪そうな長老たち・・・。しかし、こんな老人でも性的欲求が・・・強いのね、イタリア人って。騒ぐなったって、大声出しますよ、フツー。



描かれた
エロヲヤジスザンナの事を調べていたら、なかなか先へ進めません(藁)。

《スザンナ》のリブレットはモデネーゼの詩人でありフランチェスコ会のセクレタリーでもあったGiardiniによって書かれており、大きくは二つのパートに分かれています。前半がスザンナ沐浴の場面、後半が牢獄から裁判の場面です。

ガッティが作曲家ストラデッラに目をつけた事は興味深い点です。音楽を聴いてみると分かりますが、作曲家の性格は淫蕩ではあっても、音楽的には聴くべき点が多く、そして極めて美しいのです。ストーリーを知らずに聴いていると、妙なるアリアの連続に思わず聴き惚れてしまうのですから。

配役はスザンナと預言者ダニエルがソプラノを、ナレーターがコントラート、そして二人の長老(=エロヲヤジ=審判官にして悪党)をテノールとバスが担当し、これにコーラスが加わります。当然のこと、ガッティは指揮とバイオリンを担当です。

ということで、音楽の話題は日を改めることとしましょう・・・。いつになるかは分かりませんが。