2007年7月23日月曜日

スティーブ・ジョブズ-偶像復活



この本をどのような目的あるいはコンテキストに当てはめて読むかで読後感は変わるかもしれません。Appleの創業者にして最近のiPodのヒットをとばしたジョブズの波乱に満ちた半生を一気に読ませる筆致で描いて見せた作者の力量は見事です。多少の誇張やジョブズに対する偏見が透けてみえようとも、とにかく本書は圧倒的に面白いのです。


ビジネス書として読んだ場合、彼の性格や行動が破天荒であり天才的過ぎるので、一般人が参考にできることは少ないというアマゾンの読者レビュも目にします。





まあ、それはそうでしょうが、先に紹介した「ビジョナリー・カンパニー」や「ビジョナリー・ピープル」を思い出しながら読んでみると、ケーススタディとして結構面白く読めます。


ジョブズはアップル創業前に、スティーブ・ウォズニアックという天才と強引にコンビを組みます。


ブルーボックスという成功例もあるのだから、また、何かを作って売れるんじゃないかと思われた。問題は、その何かとは何なのかだった。
(P.50)


これなど、まさに「まずバスに乗せる人を決め」てから行く先を決めるという「ビジョナリー・カンパニー2」の指摘そのままです(残念ながらAppleはビジョナリー・カンパニーとしては選定されていません)。


スティーブ・ジョブズは、家庭やオフィスにコンピューターを売ることを通じて世界を変えられるというビジョンを提示した(P.75)


これは「ビジョナリー・カンパニー」で提唱された基本理念やBHAG(Big Hairy Audacious Goals=のるかそるかの冒険的な目標)に当たるものでしょうか。ジョブズは自分が具体的に何をするのかについては紆余曲折するものの、自分がどうありたいのかは理解しており、そのことに驚くべき情熱とエネルギーを賭けたことが分かります。


こうしてジョブズを考えてみると、経営トップの中には、ジョブズ的な性格を有している人も少なくはないでしょう。それであっても、誰もがジョブズにはなれないという事実、ジョブズはジョブズでしかない。ジョブズのような才能は、世界でも極めて稀であり、それ故にiCON=偶像になったわけです。彼の考え方や生き方をマネてもジョブズにはなれないんですよね。



本書の主眼がジョブズの人間的成長という面に重きを置いているとしたならば、それは成功しているといえましょう。ジョブズを知る上では格好の書です。でも、何故Appleが魅力的なのかは、依然として謎のままです。


また、ジョブズがAppleに果たした役割についても(それは映画会社pixerについても同様です)、かなり限定的な描かれ方をしています。それでも、パーソナル・コンピューター、アニメーション映画、音楽の三つの業界で多大な影響力を与えたのはジョブズの手腕であると説明しています。


デザイン・センス、卓越したプロモーション能力、論理を超えた直観力、組織を導くカリスマ性だけでは数十年に渡り、巨大な組織を率い、消費者を惹きつけておくことはできないハズです。そこのところが本書の記述からはクッキリ見えてこずに、少しもどかしさを感じないわけではありません。