2007年9月3日月曜日

展覧会:山口晃展「今度は武者絵だ!」




ついこの間、上野の森美術館で「アートで候 会田誠・山口晃展」をやったばかりというのに、今度は練馬区立美術館で再び個展です。NHKの「トップランナー」にゲストとして登場したのも、つい2週間前(8/25)でしたかね。若者ばかりではなく老若男女幅広い層にまで、その人気は当分衰えることがなさそうです。


今日は14時から、山口さんのトークもあるというので、行ってきました。個展の題目は「今度は武者絵だ!」。上野と若干かぶる作品も展示されていますが、目玉は何と言っても「トップランナー」でも紹介された《続・無残ノ介》しょうか。妖刀を手に入れた男の物語。番組の中で、ライブ・ペインティングされた絵が、ロビー正面にデンと据えられいます。



あの、ライブ・パフォーマンスは面白かったですね。キャンバスに向うなり、画面情報に「ダンっ!」とばかりに筆を叩きつける。そして自ら、それで勢いを付けたかのように、画に集中する。最初の筆は何をなぞっているのか判然としません。しかし、次第にそれが人の、しかも刀の妖気に取り憑かれた男を描き出します。筆致は早く、そして的確。アーティストは描く行為そのものがパフォーマンスになるのですね。


《続・無残の介》について、山口さんは番組でこんなことを言っていました。「マンガとは違って、目の前を大きな画(等身大に近いものも)で物語が流れたらどんな感じがするだろう、自分でも見てみたかったので描いてみた」と。全く、自分が描きたいモノを描いているのだなあと。《続・無残の介》の物語は、書くのも憚られるほど「オバカ」な内容で、しびれるくらいにステキです。文字を追うのを辛抱しきれずに、流して観ている人もいましたが、それも一つの見方でしょう。


展覧会の詳細は、TAKさんの「弐代目・青い日記帳」に譲ります。



それにしても山口さんの面白さって何でしょう。チマチマとした細かさを読み解く面白さや、精密にして的確なタッチの快感。人物造型の素直なカッコ良さ。時間軸や空間軸が重層的に重なりあった独特の世界観、古さと新しさの同居した日本人的な懐かしさ、風景、人々。子供のような遊び心、ユーモア、技巧の遊戯とギャップ。確信犯的なテーマ設定と、それを批評する人さえも逆批判する眼。自分の好きなことだけを描き続けてきたというスタンス・・・。


チマチマと評しても無駄です。じっくりと作品を見て、山口さんの「綿飴」のような話を聞き、そしてまた作品を眺め、つくづくと、心の底から、「こいつは~なァ~」と嘆息し、そしてワケも分からずに「クソーっ!」と悔しがり、「今回も、やられちゃったなァ」という思いで美術館を後にするのでした。


でも、ふと思います。山口さんも自分で話されていた「作品の新しさ」ということ。同じ事をやっていたら「マンネリ」と思われる。山口さんが批判し逃れた画壇は、今も彼を無視しているのでしょうか。山口さんは確かに全く別次元を切り開いてしまいました。さてさて、その先には何があるのでしょう。彼の批評精神と、アーティストとしての「稚気」と「毒気」は、彼を利用したい山のような商業(消費)主義と、どう折り合っていくのか。全く興味は尽きません。