2008年1月27日日曜日

大前研一:大前流 心理経済学




副題は「貯めるな使え!」と刺激的なキャッチ。要は1500兆円にもなる個人金融資産を眠らせることなく、有意義に消費、投資にまわして日本を活性化し、自分の人生をより良いものにしろというメッセージ。
もっとも「大前流」とあるように「心理経済学」という点の内容は残念ながら浅い。





ここでも日本人の多くが自分の資産さえ把握していない不思議(P.125)に警鐘を鳴らしています。把握していないのではなく、今まで把握する必要がなく、陰謀論的には把握させないように誘導されていたのかも知れませんが・・・。


氏のメッセージは強烈なのですが、一方で個人金融資産1500兆円というところに読者の生活実感がどこまで合致するか疑問です。


大前氏も高齢者から若い世代に資産を移す(P.159)と指摘しているように金融資産は高齢者に偏っています。本当にお金の必要な若年層は資産より負債の方が多いのが現実でしょう。そこで大前氏は、資産移動のために贈与税の改革と生前相続制度を挙げているのですが、現実味が少ない。というのも、資産はもはや年齢だけではなく、階層に偏在しているのが日本の現状なのではないかと感じるからです。


前提の1500兆円に関する詳細な分析がないだけに、資産ギャップを感じる人には、ほとんど空論と写ります。


それでも、多少雑ではあるものの、見逃すことのできない指摘も多い。たとえば「第6章 心理経済と集団IQ」。


シンガポールの生き残り戦略などを紹介しながら、日本の旧態依然とした地域利益重視型島国政治によって、国際社会から完全に取り残されつつある現状を活写しています。また最近話題になり始めた政府系ファンドについても言及しています。


かように海外はめまぐるしく変化しており、スピード感は驚くほどです。今の日本政治が完全な機能不全に陥っていることは日々接するニュースや仕事からも実感として感じることです。アメリカの大統領予備選の報道ぶりを見るに付け、日本の政治風景の不毛さを思い知ります。


日本がこのまま国際社会での地位を急激に落としていこうとも、多くの人たちは日本に住み続けなくてはなりません。その中で幸福を追求するには、「無知」と「怠惰」を戒め、自ら主体的な個として生きなくてはならないということなのでしょう。


正月からいくつかの投資関連本やら自己啓発本を読みましたが(梅田望夫の「ウェブ時代をゆく」も含め)、共通して感じたことは「お金の運用」の仕方ではありません。「投資」ということの持つ意味と、自分の人生に対する積極的関与の重要性です。私たちは、より良く生きるために「投資」を怠ってはいけないのだと。