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2002年3月30日土曜日

工藤重典のフルートを聴く

日時:2002年3月30日(土)17時50~18時30時
場所:メッセビル6階(札幌)
演奏:工藤重典

モーツアルト: アンダンテK315、ロンドK184
プーランク: フルート・ソナタ
ドップラー: 愛のうた(ピアノ:阿部 佳子)

札幌キクヤ楽器で工藤重典の公開レッスンがあり、その最後に工藤さんによるミニコンサートが催された。工藤さんの生演奏を聴くのは昨年の3月、王子ホール以来、ちょうど一年振りである。

二週間前の、森&高橋さんのデュオもここメッセホールで行われたが、決して音響的に優れた空間ではない。それでも200近くは入るのだろうか、仮設ステージとパイプ椅子を持ち込んだ会場はほぼ満席の聴衆と換気の悪い空間のため少しデッドで暑く、息苦しい感じ。

しかし、工藤さんの演奏は冴え渡っていた。14時から17時半までのレッスンの後だというのに、素晴らし演奏を聴かせてくれた。

工藤さんは今回はゴールドフルートにての演奏。ピアノは阿部博光さんの奥様(阿部佳子さん)による伴奏だ。工藤さんの音はどちらかというとふくよかで豊なひびきだと思う。繊細なというよりは幅の広い音だ(繊細な表現ができないとか言うのでは決してない、誤解のなきように)。時にはきらびやかに、そして、時には朗々と彼の音は響きわたる。中音域で少し「割れた」ような音に聴こえる瞬間があったが、これも彼の音の持ち味なのかもしれない。

最初のモーツアルトも良かったが、なんと言ってもプーランクのソナタは圧巻であった。思い起こせば昨年の王子ホールでの演奏でもプーランクを演奏した。工藤さんにとっては特別思い入れのある曲なのかと思う。この曲を聴いて、工藤さんの素晴らしさは、その音色の劇的なまでの変化にあるように思えた。1楽章の最初の出だしの天から降ってくるような音から始まり、湧き上がるような音楽作りをするかと思えば、次の瞬間にはガラリと雰囲気を変えた音色を聴かせ、会場の空気感さえ変えてしまう、その絶妙さ。それとともに、こんなにも「語りかけてくる」プーランクというものは初めて聴いたように思える。物凄い音楽的な説得力なのだ、さすが! と思ってしまった。

会場が小さいせいもあってか、ホールでの響きとは違い、フルートの微妙なニュアンスまで聴き取ることができたように思える。3楽章が始まる前に、工藤さんが一瞬笛を放し「緊張しますね」と言って汗を拭いたのは、会場の雰囲気がプレッシャーとなったということなのだろうか・・・?(まさか前席の聴衆に向かって話し掛けたわけではないだろうし)アンコールとして用意された「愛のうた」も素晴らしいものだったが、とにかく今日は工藤さんのプーランクを再度聴けただけでも行ったかいがあった。

最後になるが、阿部佳子さんのピアノも素晴らしかった。音色の柔らかさ、微妙なニュアンス、そして力強さ、決してフルートを殺さずそれでいてピアノの美しさを表現している、素晴らしいピアノ演奏であったと思う。

この公開レッスンとミニコンサートが無料なのだから、二週続けて得をしたと思うのであった。

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