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2007年5月31日木曜日

では、ギーレンのマーラーはいかに


ギトギトしていないベートーベンを好感に思い、ついでなのでNMLでマラ6を聴いてみる。




録音は1999年なのでかなり新しい演奏。ギーレンの路線は変わらず、硬質にして整然。クリアにして透明。美しくはあるが耽美には傾かない。激情はあっても、あからさまで無制御な感情の放出は皆無。すなわち、音楽的な峻厳さや落差は十分に表現されるが、そこから情念のようなもの、あるいは破滅的な暗さまでは感じない。それ故というのだろうか、計算された演奏は音楽的な美しさと構成美を際立たせる。


では、これがマーラーなのかと問う。マーラー好きには、マーラーに求めるカタルシスは得られないかもしれない。このマーラーを通してギーレンは何をしたかったのか。たった二つの演奏を、ラジオ並みの音質*1)で聴いただけで、これ以上語る無謀はできない。ただ、このテの指揮者は、録音と実演の印象が全然異なるような予感はある。もしもホールで聴いたならば、その音響世界にブチのめされる可能性は否定できないなと。


クラ界定番の下記サイトに詳細レビュあり。




  1. NMLが「ラジオ並の音質」というわけではない、念のため・・・。会社PCのヘッドフォンが酷いだけのことである。

2007年5月30日水曜日

疲れたときのギーレンのベートーベン


��MLは私の場合、会社のPCでも聴取可能です。毎日が仕事にただ流されていく中、NMLの薦めるままに、ギーレンのベト3を聴く。聴いて、思わず愕然として、心が洗われる。そして、やはり何か書かなくちゃという気にさせる、そんな演奏。





これって、本当にベートーベンなんだろか。第一楽章の軽快さ、優雅さ。一瞬シューベルトかと思う程の天国的リピート。


私はコアなクラシックファンではない。だからギーレンが、どちらかというと熱血系とは対照的な指揮者であることくらいしか知らない。従って食指の動く指揮者とはならず、彼の音盤が私のCD棚に存在するかさえ確認したことはない。


しかし、これは良い。というか、コテコテ演奏を受け付けない位に疲弊した体には、滋養のように染み込む。カラダに悪い脂肪分が取り除かれたサラサラの液体のよう。しかもそれでいて、ベートーベンなのである*1)。ドライな印象であってもベートーベン的なるものは細胞の核のように残り、そしてサプリメントのようにどこかを鼓舞してくれる。



  1. コレステロール1/2のマヨネーズとか、カロリーを抑えたギガ・マックとか(←ないって、そんなもの)

2007年5月19日土曜日

ビジョナリー・カンパニー2 飛躍の法則


「Good to Great」というのが原題。

ドラッカーの書もしかりですが、優れたビジネス書は働くものに多くの知見や啓蒙ばかりでなく、人生に対する希望や可能性さえ与えてくれる指南書であることが多い。そこには目新しいことは書かれていないかもしれないが、現状に閉塞感を感じているならば、何かしら目を開かせてくれる言葉に出会うものです。

そんな中にあって前書の「ビジョナリー・カンパニー」(→レビュ)は目からウロコ級の極めて優れた書でしたが、本書も同様であり、ベストセラーの名の下の二番煎じやドジョウなどでありません。

ここでは本書の要旨やポイントについて言及するつもりはありません。手軽に知りたければamazonのレビュを参照すればよく、また章ごとに要約が端的にまとめられています。

私が一番感心したのは、本書のスタンスです。筆者のジェームズ・C・コリンズと今回の調査研究に携わった研究者達の膨大な尽力には畏敬の念さえ覚えます。そして、それこそが本書の大きな魅力だと思います。

前書でもそうでしたが、「自社ビルを見つける」落とし穴を避けるという問いの立て方は重要です。ビジョナリー・カンパニーに共通する特徴を見つけるのではなく、これらの会社が本質的に違う点は何か。ほかのグループの会社と比べて際立っている点は何かという問いを立てろと主張します。今回はビジョナリー・カンパニーの替わりに、飛躍した企業に対し同様の問いを立てて調査研究が進みます。

前書の読者からの素朴な疑問に立ち向かうため、前書の前提を一旦捨てた所からスタート、5年間に渡る徹底的な調査と討議。ともすると陥りがちなはじめにあった理論を調査によって試すか証明する方法は取らず、データと事実にのみ準拠する姿勢、その結果から導かれた結論の重い説得力。プロセスに妥協は無く、驚くべき真剣さと熱意に打たれます。

そして、これらの活動の根本にあるのは、あふれるばかりの好奇心。

こういう質問をよく受ける。「そこまで大がかりな調査研究を進めた動機は何なのか。」的を射た質問だ。この問いの答えは一言でまとめられる。好奇心である。答えを知らない疑問をとりあげて、答えを追及していくことほど面白いことはない。(P.8)

そうなのです。だから本書は読み始めたら止まらない程に面白いのです。ビジネス書でありながらワクワクし、ドキドキし、自分の自身や所属する組織に思い巡らし、そして何かに気づきます*1)

一方で、しかし、とも考えます。

GEの偉大な経営者であったウェルチもそうですが(→たとえばこれ)、なぜ発展すること、勝つこと、Greatになることが重要なのか。拡大することを宿命付けられた資本主義の幻影を追っているだけなのか。否と筆者は応えます。

「なぜ偉大さを追求するのか」という問いはほとんど意味を持たない。(中略)

ほんとうに問題なのは「なぜ偉大さを追及するのか」ではない。「どの仕事なら、偉大さを追及せずにはいられなくなるか」だ。

つまりそこそこの成功で十分ならば仕事の選択を間違えているのだと断言します。

このような疑いのない明るさをベースとしたポジティブさに抵抗を覚える人もいるでしょう。理解はしても斜に構えたくなる人もいるかもしれません。それでも本書の語ることを無視はできません。どこかで成功するとか何かを達成するということに対し、そして少しでも人生の意義を見出そうとするする人であれば、本書から何かを得られるはずだろうと*2)

  1. 気づくことの多くは、ゲンナリさせられるものばかりなのだが・・・_| ̄|○
  2. 逆に言うと、そういうことに全く意義を見出さない人には役に立たない、というか、そういうことに興味のない人は・・・そもそも、こういう本を決して読まないだろう。

2007年5月7日月曜日

連休の終わりにシェーファー

今年もGWは終了。有楽町方面の熱狂は今年も全くスルー。来年こそ熱狂デビューできることを、ひそかに期待しながら、さて明日から仕事である。別に今更憂鬱にもならないが、初日からトップ・ギアで月末まで走らないと間に合わないだろうことは予想され、やれやれではある。

ということで、クリスティーネ・シェーファーを数枚聴いている。まずはNMLで、バッハやハイドン、メンデルスゾーンを。

バッハはコーヒー・カンタータも良いが、結婚カンタータの方がレチタティーヴォを含めシェファーの歌声を堪能できる。

続いてHMVでゲットしておいたシューベルトとシェーンベルク。


        
  • 457 630-2 シェーンベルク:月に憑かれたピエロ/ブーレーズ
  • C450971A シューベルト:歌曲集

シェーファーは、クラ系ブログでもチラホラ話題に上る期待の歌手(例えばここ→Takuya in Tokyo)。薦められるままにNMLでシューベルトの「冬の旅」を聴いて以来、その歌声が気になって仕方がないのである。古楽やロマン派も良いが、やはり予想に違わず現代曲も素晴らしい。彼女の硬質にしながらリリカルな歌声は確かに現代的であるように思える。ただし、感想を書けるほどには至っていないので、これにて。

これもTakuyaさんのブログで知ったのだけど(→http://blog.livedoor.jp/takuya1975/archives/50324383.html)、古楽と現代曲しか聴かないクラシック・ファン(「中抜き」)というのが存在するらしい。私の知る知人には居ないが、著名人では石田衣良氏などがその典型なのだろう。彼の小説は読んだことがないので分からないが、外見から判断する限り、テンシュテットのマーラーとか聴いて泣いたりはしないのだろうな・・・と。