エマニュエル・パユ/Emmanuel Pahud のフルートによるソロ、コンセプトアルバムです。テレマンの無伴奏フルートのための幻想曲全12曲の間に、様々なフルートの無伴奏曲が挿入されています。
テレマンの無伴奏はフルート曲としては定番で、多少耳タコ的な印象を受けますけど、こうしたコンセプトアルバムとして聴きなおしてみますと、聴きなれた曲も新鮮な印象を受けます。テレマンだけ取出して聴いてみても、なんと活き活きと吹いていることか!と驚きます。
挿入されている武満やオネゲルなど、これまたフルート系を親しむ人には定番と思えるような曲たちや、決して聴きやすくはない現代曲も、なかなか面白く、そして興味深く聴けます。
フルート無伴奏だけのアルバムだと、どうしても物足りなさを感じてしまいがちですが、このアルバムもパユという名手と曲の構成の工夫でCD2枚分を一気に、飽きることなく聴かせてくれます。武満の「エア」ではじまり、マレの「フォリア」で終わるのも、フルート好きには泣かせる構成でしょうか。イェルク・ヴィトマン(Jorg Widmann)とマティアス・ピンチャー(Matthias Pintscher)の作品は、パユが初演を受け持った曲とのことです。
以下にパユの言葉を引用しておきます
"Most of the pieces are about exploring new paths," says Pahud. "The power of this music often lies in the contrast between a simple line and the most refined complexities, between a note so quiet as to be barely perceptible and the loudest, most extreme notes playable on the instrument."
以下にLIMELIGHT Music,Arts&Cultureというサイトで見つけた、少し辛めの批評も引用しておきます。
The modern pieces are spectacular – Pahud does a cracking Karg-Elert, he gives Takemitsu’s Voice a brutal horror and Pintscher’s Beyond (a system of passing) is fiercely rendered, the flautist ripping through flurries of notes and growling out the extended techniques – but the shifts in style grate. The “unpredictable listening experience” billed in the liner notes feels instead haphazard. The concept recalls Sharon Bezaly’s Solo Flute from A to Z series on BIS (which went quiet after the third release made it to D in 2005) and like Bezaly’s discs, SOLO is more satisfying to cherry pick from than as a complete program.
(ゲオルク・フィリップ・テレマン(1681-1767):無伴奏フルートのための幻想曲は曲番と調性のみを表示)
- 武満徹(1930-1996):エア(1995)
- 第1番 イ長調
- ジークフリート・カルク=エーレルト(1877-1933):ソナタ・アパッショナータ 嬰ヘ短調 作品140
- 第2番 イ短調
- イェルク・ヴィトマン(b.1973):小組曲(2016) I.アルマンド/II.ラメント/III.サラバンド
- 第3番 ロ短調
- 武満徹:声(ヴォイス)(1971)
- 第4番 変ロ長調
- ロバート・ヘルプス(1928-2001):セカンド・ソーツ
- 第5番 ハ長調
- アルテュール・オネゲル(1892-1955):牡山羊の踊り H39
- 第6番 ニ短調
- マティアス・ピンチャー(b.1971):beyond (a system of passing)(2013)
- ピエール・オクターヴ・フェル―(1900-36):3つの小品 ~I.恋にとらわれた羊飼い
- 第7番 ニ長調
- フェル―:3つの小品 ~II.翡翠
- 第8番 ホ短調
- カール・ニールセン(1865-1931):子供たちは遊んでいる (劇音楽「母」より)
- 第9番 ホ長調
- フェル―:3つの小品 ~III.端陽(端午の節句)
- 第10番 嬰ヘ短調
- ルチアーノ・ベリオ(1925-2003):セクエンツァI
- 第11番 ト長調
- アルヴォ・ペルト(b.1935):エストレントラー
- 第12番 ト短調
- エドガー・ヴァレーズ(1883-1965):デンシティ21.5
- マラン・マレ(1656-1728):スペインのフォリア
(参考)
- エマニュエル・パユ『ソロ』(2枚組) フルート1本で描かれる、豊潤な音のタペストリー Tower Records 2018.3.27
- Solo Emmanuel Pahud Warner Classics 2018.3.3
- Solo (Emmanuel Pahud) Pahud flies solo with works old and new, but Solo fails to land. LIMELIGHT Music,Arts&Culture
0 件のコメント:
コメントを投稿