2002年2月14日木曜日

 「高層マンション条例、国立市に4億円支払い命令」に思う

気になるニュースが日経新聞HPに掲載されていた。それは、明和地所が、景観を理由に高層マンション建設を妨害され利益を侵害されたとして、東京都国立市を相手に起訴していた件である。東京地裁の判決は「「景観保持の必要性を過大視し、利益を違法に侵害した」と述べ、市に請求通り4億円の支払いを命じた。」というものだ。

このニュースには少なからず驚きを覚えた。行政側がこの種の判決で敗訴するということも異例のことであるかもしれない。もっとも、この記事以外に背景は知らないので、報道されない以上の事柄があるのだろう。

札幌市においても、円山公園周辺の景観を阻害するとして、いくつかのマンション建設が留保されたり、高さを見直し建設が進められたということは記憶に新しい。最終的には、デべ、行政、地域住民の三者の間で妥協点を見出しての建設ではあるが、デベロッパーとしては想定していた利益を得ることができなかったという不満は残っているだろう。

日本においては、都市景観に関する規制はあってないに等しい状況である。西欧のように古い街並みを維持しようという考えは、なかなか根付かない。それは文化や国民性にまで波及する問題かもしれないため、いまはそこまで踏み込まない。

しかし、我々の生活する環境や景観として何が一番よいのか、守らなくてはならないものが何なのかを論議することは難しい。景観論も時代により変遷を辿ってきている。今回の判決も、正しいとか間違っているとかいう感覚よりも、いまの我々が何に重きを置いて生活しているのかということの現れのように思えるのだ。


先に東京都国立市の高層マンションの地裁判決について書いた。2月14日の朝日新聞(夕刊=首都圏では朝刊か?)には、もう少し詳細な事情が紙面に述べられていた。

それによると国立市は、同建築物を「違法建築」と呼び、今まで何の規制も無かった地区に、突然高さ制限条例を設けたものらしい。それにより、地価やイメージが下落したとのことである。

これだけを読むと、確かに行政としては慎重さに欠き性急な判断であったと言わざるを得ないかもしれない。付近にどの程度高い建物が存在するのかは、当地を知らないので判断できない。判決では、地域住民を含めて利害関係を明確にしないままの条例ということにも言及しているようだ。

それでも思う。健全なる環境や行政主導ということに関してである。今はこれ以上はコメントができないが・・・

というのも、この問題は非常に複雑なようで、昨年12月、東京地裁の別の部では住民訴訟に対して「違法建築物と認定」する判決を出しており、その点において、今回の判決とぶつかるものである。更に、明和地所の条例の無効確認の訴えは却下しているのだ。

実は、この明和地所問題に関しては建設反対派によるHPが立ちあがっている。少し巡回してからまた考えるとしよう。


この問題に関し更に、河北新聞社のサイトを読んでいると、市長の以下のようなコメントが掲載されていた。

「歴史的に積み上げた景観は守らねばならない。地域づくりに貢献しない企業は淘汰(とうた)される」

一見正しい意見である。しかし、利害関係、行政方針、文化歴史観など多くの要素を考えると複雑な思いでコメントを読まざるを得ない。「景観論」「都市論」というのは、私の学生時代のひとつのテーマでもあった。今は学生時代のように甘いユートピアを叫ぶことはできないものの、どこか歯車の食い違いに違和感を覚えるのだ。


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