2月16日 朝日新聞夕刊に評論家の諸石幸生氏が『「名演奏家の時代」に幕』として一文を寄せいている。彼によると
ヴァントは指揮芸術がもつ神秘的魅力に人生のすべてをかけ、その奥義を私たちに伝えてくれた、
指揮は技術は才能だけでなく、年輪と経験、人間性と哲学といったものが渾然一体となって熟成され、その後に本当の光が放ち始めることを成し遂げた指揮者であったと回顧する。短い文章は
「演奏の時代」「名演奏家の時代」と言われ続けた20世紀は、今、ヴァントの死をもって閉じられた。それはある意味でカラヤンやバーンスタインの死以上の重みをもつように思われてならないと結んでいる。
引用が長くなってしまったが、この意見にはうなづく人も多いだろう。ドイツの音楽を得意とし、特に晩年になるほどに精力的にブルックナーやブラームスを録音し、そのたびに自らの名演を上回る名演奏という評価を得てきた。一昨年11月の来日公演の記憶も新しい。私も、彼の生演奏に接したことがあるわけではないものの、「巨匠」とよべる指揮者が遂に消えてしまったことを思わずにはいられない。それが、例えクラシックファンの幻想でしかないとしてもだ。
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