「両国の歴史問題は解決済だ」と中国はおろか、日本でも刺激的なフレーズが帯に踊る真っ赤な本です。内容は真摯な提言に満ちた本でした。日本の歴史認識を覆したいとして躍起になっている方々、逆に昨今の有事関連法案に過敏になっている人などこそ、ぜひ読むべきではないかと思う本であります。
「日本は中国に謝罪しなくていい」というタイトルの本が、中国人によって書かれているということで、ちょっと胡散臭さもあったのですが、読んでみました。馬氏は、中国青年報評論部副主任を経て、人民日報高級評論委員になった方で、2003年より香港フェニックステレビの評論員を務めています。
内容は至極まっとうな、将来的な展望を語った書でした。馬氏は日中国交正常化から30年も過ぎているというのに両国の間では嫌悪と敵意が拡大していることを憂い、その主たる原因を、中国内と日本内で生じている一部の偏狭ナショナリズムのと無関係ではないと説明しています。
中国ナショナリズムの代表としては『ノーと言える中国』『中国パッシングの背後』『グローバリゼーションの影の下の中国の道』『衝突』『中国を脅かす隠された戦争』の5冊を例にとり、ナショナリズムの偏狭な論理を斬り捨てています。(第二章 尊大で偏狭な「中国ナショナリスト」たち)
一方で日本のナショナリズムにも厳しい眼を向けており、日本のナショナリズムの高まりも中日関係を阻害したと説明しています。代表的な人物としては石原慎太郎氏、歴史・検討委員会の委員長であった故山中貞則氏、小堀圭一郎氏、中村粲氏、総山孝雄氏、松本健一氏、西部邁氏、高橋史朗氏、大原康男氏、そして小林よしのり氏などの論説を紹介し、ナショナリストの論理の誤りと危険性を述べています。(第三章 徹底批判「石原慎太郎」から「小林よしのり」まで)
中国内では、日本が中国に対して謝罪をしていないという意見が根強いのですが、これも全くの誤解であると説明しています。彼は1972年から2001年まで合計21回もの正式な謝罪があり、すでに中日間の問題は解決済であると説明しています。感情的な対立は前進のためにはマイナスにしかならないと説きます。また東京裁判のことにも触れ、日本の侵した戦争犯罪はすでに裁かれ責任追及もすでに完了していると説明しています(第四章 日本の指導者に「土下座」を求めてはならない) 。
最終的に場氏は、これからますます重要な地位を占めるであろう中国とともに、日本、韓国も含め共存してゆく道を後の4章に渡って説明しています。まさにこれこそ馬氏の言いたかったことなのでしょう。経済、金融面のみならず安全保障の面でも協力関係を築くことのできる可能性を示唆しています。その中で、昨今の日本の有事法制のあり方については、日本が軍国主義の道を歩もうとしているわけではない、「普通の国」になろうとしているだけである、と理解を示しています。
非常に新鮮な観点から書かれた本であり、傾聴に値するものです。日本の歴史認識を覆したいとして躍起になっている方々、逆に昨今の有事関連法案に過敏になっている人などこそ、ぜひ読むべきではないかと思う本であります。
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