ビーバー:ヴァイオリン・ソナタ集
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寺神戸さんについては今更言及するまでもありませんが、この演奏はコレッリのヴァイオリン曲集の姉妹編に当たるのだそうです。
ビーバー(1644-1704)は解説によると
17世紀屈指のヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ・作曲家とされております。バッハよりも半世紀も前に、ヴァイオン・ソナタにおいて、こんなにも豊穣な世界があったということに驚かされます。技巧の域はきわめて高く、宗教的な色彩を帯びながらも、そこに拘泥しすぎずに音楽的な自由さまでも獲得しているように思えます。
最初に納められているソナタ 第5番 ホ短調を聴くだけで、ビーバーの哀愁を帯びながらも、敬虔で華やか内面世界の表出に聴き惚れてしまいます。主題の変奏が次第に高まっていくさまはスリリングでさえあります。
ソナタも良いですが、有名なのはやはり「ロザリオのソナタ」でしょうか。「キリストの秘蹟に基づく15のソナタと、パッサカリア」という副題がついており、寺神戸氏が
外側のドラマだけでなく聖書の意味の核心を付く内面的な表現と解説するように、非常に錬度の高い曲に思えます。
「守護天使」と題された《パッサカリア》は、重音奏法を用いたポリフォニック(多声的)な作品で、バッハのシャコンヌの先駆けのような曲ですが、聖書的世界には全く疎い私でも、この曲を聴くだけで祈りにも似た気持ちと、心の奥底に安らぎのようなものが宿るのを感じます。おそるべしビーバー。
音盤狂日録にもビーバーの記述がありましたので、リンクを紹介しておきます。