チョン・キョン=ファとプレヴィンの盤でプロコフィエフのヴァイオリン協奏曲を聴いてみました。録音は1975年ですから、キョン=ファが27歳の演奏。キョン=ファがプレヴィンとの共演で強烈なデビューを飾ったのが1970年ですから、その5年後の演奏ということになります。
チョン・キョン=ファ/プロコフィエフ、ストラヴィンスキー
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ヴァイオリ協奏曲第1番は、ヴァイオリンのあらゆる技巧が短い曲の中に詰め込まれていて、多彩な奏法が次から次へと繰り広げられる曲です。一方では「夢見るような」第一楽章の第一主題が曲全体を支配している、極めて叙情的でメロディアスな曲でもあります。この叙情性と前衛性がミックスした二面性のあるプロコフィエフらしい曲を、どう表現するかということがポイントだと思います。
キョン=ファの演奏は、そのテーマに真正面から堂々と取り組んでいるように思えます。叙情的な旋律の歌わせ方は繊細で、それでいてたっぷりと、技巧的な部分においては一転して技の切れ味も鋭く、グイグイと聴く物に迫ってくる感じです。グロテスクと評される第二楽章のスル・ポンティチェロ、コン・トゥッタ・フォルツァ(駒の近くを弾くように全力を込めて)の部分も力強く情熱的です。キョン=ファは情熱的な演奏をする印象がありますが、全体的には感情過多という程ではなく、むしろ若さとか、音楽を奏する喜びとかが伝わってくるような演奏です。だから聴いていて何だか気持ちがいい。
もっとも、この間のヒラリー・ハーンの演奏からは、もっと違ったものが聴こえてきたような気がしていたのですが、もはや確認することができません。
もうひとつの、ヴァイオリ協奏曲第2番は、第1番に比べてより前衛性が交替し、円熟と叙情性の強い曲です。プロコフィエフが亡命を終えてロシアの地に永住することを決めた心理的なものが影響しているのかもしれません。キョン=ファの演奏は、こちらも、それはそれは熱演であることに変わりはありませんが、聴いていてちょっと飽きてしまうところがある。それが曲のせいなのか、演奏のせいなのかは分かりません。何度も繰り返して聴いてしまったせいでしょうかね。
ストラヴィンスキーは機会があればということで。
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