フィリッポ・ゴリーニ Filippo Gorini(1995-)は、イタリア生まれのピアニスト。ALPHAレーベルからは「ディアベリ変奏曲」「ハンマークラヴィーア」をすでに録音しています。
J.S.バッハの作品にあって「フーガの技法」は、名前は知っていても、しっかりと向き合って聴いたことが無かったのですが、こうして聴いてみますと、やはり偉大なる曲でありました。しかし、本当に曲が「分かっているか」と問われれば、否と答えるしかありません。
このフーガの技法、漫然と聴くだけではと思い、ピティナ・ピアノ曲辞典を参照してみましたが、はっきり言ってチンプンカンプンです。
はじめに強調しておくが、ここに含まれる作品は、おそらく全曲とおしての演奏を想定して作られてはいない。《フーガの技法》を単一主題によるフーガ変奏曲のように扱うのは、そもそも聴き手の集中力に鑑みて無理があるように思われる。
なるほど、平均律と同様に通して聴くことを想定していない。また、フーガという技法の集大成のようなものであるため、あるテーマごとに聴いた方が良いのかもしれません。
ピティナ・ピアノ曲辞典によれば、フーガの技法は下記のようなまとまりになるようです。
第1群:基本のテーマによる単純フーガ(Contrapunctus 1-5)
第2群:反行ストレッタフーガ(Contrapunctus 6-7)
第3群:転回対位法による二重フーガ(Contrapunctus 9-10)
第4群:三重フーガ(Contrapunctus 8,11)
第5群:鏡像フーガ(Contrapunctus 12-13)
第6群:カノン
第7群:未完の4声フーガ
それぞれが、フーガ(Contrapunctus)の様々な技法を用いて作曲されています。フーガの基本的な用語だけでも(意味不明ながら)抑えておきましょう。
カノン:複数の声部が同じ旋律を異なる時点からそれぞれ開始して演奏する様式の曲
フーガ:カノン同様、同じ旋律が複数の声部に順次現れる
倒立形:基本形の音程進行をひっくり返した主題で始まる
転回:音程を上下逆にすること(転回主題、反行主題)
転回対位法:固定した対位句がつねに主題に随伴する(この対位句と主題はどの声部にどちらが現れても、つまり上下関係をかえても音楽が成り立つ)
鏡像対位法:曲全体をすべて転回しても音楽が成り立つような技法
拡大・縮小:フーガの中で、主題がその音価を整数倍に拡大して示される場合、これを拡大フーガと呼ぶ。主題が音価を縮小されて示される場合、これを縮小フーガと呼ぶ。
さっぱり分かりませんね(笑)。
ここらあたりを頼りに少し聴きこんでみないことには、「郡盲象を評す」にさえならないような気がしてしまします。
曲集の最初のテーマは、なんとも古臭く躍動感のないものですが、それがフーガの技法を身にまとい様々な変奏を加えていく様は、さすがにバッハであるなと思わせます。特に印象的なのはフランス様式のContrapunctus6や、12度(5度)の転回対位法によるContrapunctus9、素早い三連符が印象的な鏡像のフーガContrapunctus13などでしょうか。
難しいことはあまり考えずに聴いてますと、このとっつきにくそうな曲群の完成度と音楽性の高さに驚かざるを得ません。また最後の未完のフーガがどういう形で発展して終結するハズであったのかと、考えずにはいられません。
改めて、このあまり人気のなさそうな曲を選んだ、フィリッポ・ゴリーニというピアニストの他の録音も、そのうち聴いてみましょう。
- コントラプンクトゥス I (BWV1080/1)
- コントラプンクトゥス II(BWV1080/2)
- コントラプンクトゥス III (BWV1080/3)
- コントラプンクトゥス IV (BWV1080/4)
- 8度のカノン (BWV1080/15)
- コントラプンクトゥス V (BWV1080/5)
- フランス様式による4声のコントラプンクトゥス VI(BWV1080/6)
- 拡大と縮小による4声のコントラプンクトゥス VII (BWV1080/7)
- 反行形による拡大カノン (BWV1080/14)
- 3声のコントラプンクトゥス VIII (BWV1080/8)
- 12度の転回対位法による4声のコントラプンクトゥス IX(BWV1080/9)
- 10度の転回対位法による4声のコントラプンクトゥス X (BWV1080/10)
- 4声のコントラプンクトゥス XI (BWV1080/10a)
- 5度の転回対位法による12度のカノン
- 4声の鏡像コントラプンクトゥス XII 正立 (BWV1080/12.1)
- 4声の鏡像コントラプンクトゥス XII 倒立(BWV1080/12.2)
- 3声の鏡像コントラプンクトゥス XIII 正立(BWV1080/13.2)
- 3声の鏡像コントラプンクトゥス XIII 倒立(BWV1080/13.1)
- 3度の転回対位法による10度のカノン(BWV1080/14)
- 3つの主題によるフーガ(コントラプンクトゥス XIV)(BWV1080/19) 未完
(参考)
- バッハ :フーガの技法 BWV 1080 - ピアノ曲事典 - ピティナ
- 【楽器は?配列は?】バッハ『フーガの技法』を聴く技法 【わかんないことだらけ】 edy classic
- フィリッポ・ゴリーニ/バッハ:フーガの技法 HMV
- Filippo Gorini 公式
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