2006年8月5日土曜日

ベートーベン:ピアノ・ソナタ23番「熱情」/リヒテル




GREAT PIANISTS OF THE 20th CENTURY
SVIATOSLAV RICHTERⅡ

    ベートーベン
  1. ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26
  2. ピアノ・ソナタ 第17番 ニ短調 作品31の2《テンペスト》
  3. ピアノ・ソナタ 第23番 ヘ短調 作品57《熱情》
  4. アンダンテ・ファヴォリ ヘ長調 WoO57
  5. ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO 6
  6. ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 作品109
  7. ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 作品110
  8. ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 作品111
  • 456 949-2

ファジル・サイの《熱情》を聴いて、ふと他の演奏も聴きたくなって、手元にあったリヒテルの演奏を聴いてみました。

ここに納められている演奏は1960年11月、ニューヨークのスタジオ録音のものです。もはや評価の定まった演奏であろうとは思うものの、改めて聴いてみれば圧巻の一言。確信に満ちた響きと圧倒的な凄みには返す言葉がありません。

それにしてもリヒテルのピアノを響きの深さといったら! 余韻の持つ美しさ、決して粗野にならない強靭さ。音に込められた意味が、音楽でしか表現できない感情が、ここには詰まっています。

ファジル・サイの演奏では経過句に過ぎなかった第2楽章が、かくも優しく染み入るような深さで表現されてしまっては完敗です。中盤の早いパッセージ部では思い出と哀しみの華が散り乱れるかのようで痺れてしまいます。

第3楽章であっても、あくまでも微妙な起伏と激しさを高度にコントロールしながら、早い中にも響きを込めます。

圧倒的名演というものは、何度も聴いていられるものではありません。救いなく渦巻きながら疾駆する絶望と哀しみ、プレストでの自虐と諧謔の後の凄まじさ。嗚呼・・・もはや論評不能。