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2004年6月13日日曜日

【演奏会】瀬尾和紀フルートリサイタル


東京文化会館小ホールで瀬尾和紀さんのリサイタルがあると知り、当日券を求めて聴いてきました。


瀬尾和紀フルートリサイタル
2004年6月12日(土)19:00~ 東京文化会館


●J.S..バッハ:無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第2番より シャコンヌ●P.タファネル:魔弾の射手による幻想曲●R.シューマン:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ短調 作品105●Ph.ゴーベール:ファンタジー●G.フォーレ:ヴァイオリン・ソナタ第1番 イ長調 作品13●A.ジョリヴェ:リノスの歌

●フルート:瀬尾和紀●ピアノ:長崎麻里香




瀬尾和紀氏といえば、現在はソリスト、室内楽奏者としてフランスを拠点に活動する若きフルーティストです。颯爽たる経歴と実力の双方を兼ね備た21世紀を担うプレーヤーと言って良いでしょう。そんな瀬尾氏のリサイタルだったのですが、649席のホールにガラガラと空席が目立ちます、勿体無いことですね。私のせいではないのに、申し訳ない気持ちになってしまいます。コンサートはやはり8割以上埋まった状態で聴きたいものです。


さて、そんな今ひとつな雰囲気の演奏会だったのですが、曲目はプログラムを見ても分かるように、非常に意欲的なものであったと思います。オリジナルがヴァイオリンの曲が3曲も入れられています。特にJ.S.バッハによる無伴奏ヴァイオリンの為のパルティータ 第2番 シャコンヌは瀬尾氏自身の解釈によるものだとか。


このニ短調の有名なシャコンヌは、最初の和声進行が30回も繰り返され、この楽章だけで15分以上を要する大曲です。ヴァイオリンを知り尽くしたバッハが高度な技法を駆使して構築した崇高なる曲で、完成度の高さから独立して演奏されることも多い曲です。音域が似ているとは言え、重音などを出せない性能的に限界のあるフルートでどこまでバッハの世界に迫れるのかが、個人的には最大の聴きどころでありました。


しかしながら、期待と不安の交錯するなかで曲冒頭の重音を伴ったテーマが、驚くほど鮮やかに聴こえてきたときには、ゾクリとすると同時に小さな戦慄を覚えてしまいました。分散和音に乗って現れるテーマの確実さ、細部の構築とともに大きな枠組みを築くかのような音楽の作り方、どこを取っても瀬尾氏の完璧なまでのテクニックに裏打ちされた音楽は、ヴァイオリンの曲であることを忘れさせ、静かで深い感動を与えてくれました。まさに圧巻と言っていい感じです。


曲の感想を個々に述べても駄文にしかなりませんので、リサイタル全体を通じて感じた瀬尾氏のフルートについてだけ少し書いておくこととしましょう。


彼の使用しているフルートがどこのメーカのものかは分かりませんが、ゴールド系のようです。音質は柔らかでかつ深く、朗々という表現が適切です。東京文化会館の少々かため(のように感じた)の空間において、ピアノの反射板を全開にしていてもなおピアノと対等以上の音量を確保し、それでいながら自己主張しすぎる音ではなく、非常にストレートに響いてきます。中低音の豊かさ、ピアニッシモでのフラットさなどは特筆ものかもしれません。


フラットと書きましたが、瀬尾氏のフルートには「クセ」とか「節」のようなものが、ほとんど感じられません。素直であり、ある意味朴訥として聴こえる場面がないわけでもありません。逆に華やかさや煌びやかさというものは、瀬尾氏からはあまり感じません。


これが彼の持ち味であるのかどうか、たった一度の演奏会では分かるはずもないのですが、しかし、それだからでしょうか、瀬尾氏の音楽は、テクニックが云々とか音色がどうとかいう次元を少し超えていて、何か音楽の大きさを伝えてくれるように感じられました。あくまでも作曲家に忠実というのでしょうか・・・素人判断なので的確には表現できないのですが。バッハ以外では、フォーレとジョリヴェの曲が良かったですね。


今日の演奏会では、瀬尾氏は一言もしゃべらずに淡々とプログラムの6曲とアンコール2曲演奏してリサイタルを終えました。今年8月5日(木)に旭川市民文化会館にて札幌交響楽団とモーツアルト フルート協奏曲第1番を演奏する予定のようです。もう一度どこかで聴いてみたいものだと思いながら上野を後にしました。


■サイト内、瀬尾和紀関連エントリー

 ・L.ホフマン フルート協奏曲全集 第1集

 ・音楽雑記帳

2002年3月2日土曜日

【音盤】瀬尾和紀/L.ホフマン フルート協奏曲全集 第1集


L.ホフマン Leopold Hofmann
フルート協奏曲 ト長調 (Badley G2)
フルート協奏曲 ニ長調 (Badley D1)
フルート協奏曲 イ長調 (Badley A2)
フルート協奏曲 ニ長調 (Badley D6)

指揮:ベーラ・ドラホシュ
演奏:ニコラウス・エステルハージ・シンフォニア
フルート:瀬尾和紀 録音:1999.11 ブタペスト フェニックス・スタジオ
NAXOS


音楽雑記帳で瀬尾和紀を以前取り上げた。Naxosに録音した演奏があるというので、CDショップに行くたびに探していたが、やっと見つけることができた。L.ホフマンのフルート協奏曲集である。これは瀬尾のNaxosへのデビュー盤であるとともに、ホフマンのフルート協奏曲全集の録音としては世界初のものらしい。

L.ホフマン(1738-1793)という作曲家は馴染みがない。CD紹介によると「ハイドンと同時代にウィーンで活躍した名職人」とある。当事のウィーンで、おそらく一番ポピュラーで成功した作曲家であるらしい。さらに解説を読み進めると、D1のニ長調協奏曲は長らくハイドン作と考えられていたらしい。ホフマンは多くの室内楽とともに13のフルート協奏曲も書いたと伝えられている。残念ながらそのすべてが現存しているわけでも、曲について分かっていることも少ないとのこと。

早速聴いてみたが、冒頭から華やかな管弦楽の音が響いてくる、よき宮廷時代の音楽だ。「優雅で上品、そして快活」「極上の耳の御馳走」とCD紹介に書かれるのも納得である。確かに毒もなければ「罪もない音楽」だ。でも、日々の生活や仕事に疲れきったときには、このような音楽を聴くことで再生する何かがあることは否定できない。ヒーリングというのとは少し違う、体の芯の方に染みてゆくき、何かが確実に活性化される。

瀬尾は、その言動などから誤解を招くことも多いようだが、フルートの実力は既に充分なものを身につけていると思う。さらには、彼独特の硬質かつ精緻な雰囲気が、音や音楽に個性として現れているように感じる。Naxosの初録音も、なぜ18世紀のホフマンの音楽なのかと考えてみたが、ホフマンの世界初の全集盤ということに彼の自信と意欲が現れているのかもしれない。

ここで聴かれる瀬尾の音はクリアだ。そしてある確信をもって奏されるさまは、その音の出だしから惹きつけられる。装飾音符の正確さや音の伸びやかさなどは、聴いていて清清しい思いがする。音楽に生きと若さのようなものを感じるが、それは瀬尾の音楽家としての若さということではない。ストレートに音楽を表現している分、アクやクセがなく、淀みなく音楽が奏されるさまは清流の透明な水で口を漱ぐかのような快感を伴うものだ。カデンツァもそんなに長くはないが、聴きごたえのあるものだ。さりげなくはさまれる名人芸には心から静かに拍手を送りたい。

ただ、それがホフマンの音楽性なのかは分からないが、きらびやかにして天上にも上るかのような至福にも似た華やかさや、逆に至福の翳として暗さなどは期待できない。それをして音楽的な深みがないと言うつもりはない。逆に素直な屈託のなさゆえに身構えずに聴くことができる。それ故に当事は万人に受けしたのかもしれない。瀬尾のフルートはそういう、曲の持つ性格までも端的にあぶりり出しているようである。

最後に付け加えるが、バックのオケも悪くない。こういうCDを1000円以下で提供しているのだから、Naxosというのはやっぱり侮れない。第2集も発売されているはずなので、そのうち入手しようと思う。

2001年11月12日月曜日

瀬尾和紀のフルート

瀬尾和紀のフルートを聴いていみた。このごろフルートばかり聴いているが、親切にも友人が貸してくれたもの。
瀬尾さんは、ランパル国際コンクール、カール・ニールセン国際コンクールなどのコンクールにも上位入賞、今年の第5回神戸国際フルートコンクールでも入賞を果たしている気鋭である。74年生まれ、17歳で渡仏しパリ国際高等音楽院に首席で入学、98年にはフルート科を優秀なる成績で卒業(プルミエ・プリ)、卒業後は大学院課程に在籍しフルートを学んでいる。
早くから日本を離れ、海外で研鑚を積んだその姿勢は彼の音楽に対する思いを象徴しているようである。そんな彼が、Naxosに次いで録音したものが「シランクス フランス近代フルート作品集」である。
彼の笛は、先に聴いた高木綾子とは違う、厳しさと鋭さを感じさせる音だ。高木綾子は神戸では本選に進めなかった、だからといって、どちらの方が上手いとか言うことは私にはできない。1曲目のシリンクスにしてもだ、高木綾子とは随分趣の違う曲に仕上がっている、それぞれがおもしろい。
シランクス~フランス近代フルート作品集~ 瀬尾和紀 Kazunori SEO
ドビュッシー: シランクス フランセ: ディヴェルティメント プーランク: ソナタ ドビュッシー: 牧神の午後への前奏曲 ピエルネ: ソナタ Op.36 ゴダール: ジョスランの子守唄 ワックスマン: カルメン・ファンタジー
ローラン・ワグシャル(Pf.) ワーナーミュージック・ジャパン WPCS10970 2001年録音 ステレオ
集められた曲は私には新鮮な曲が多く聴いていて飽きない。とくにフランセのディヴェルティメントの諧謔さと洒脱さはには脱帽である。プーランクも私は非常に好きな曲だが、イマジネーション豊かで素晴らしい。ジョスランの子守唄も非常によい曲だ。
��Dでは自らが曲などにつて解説しているほか、彼のHPでは神戸国際フルートコンクールについての感想も述べている。興味のある方は覗いてみてはいかがか?もっとも、レビュを書くつもりではなかったので、私はこれらの彼の文章を読んではいない。音楽家の書く文章は嫌いではないが、聴き込む前に演奏者自らの「感性」やイメージを言葉で知る必要はないと思うからだ。