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2009年1月12日月曜日

映画:エジプトのジュリオ・チェーザレ(ジュリアス・シーザ)

新宿バルト9で上映されているUKオペラCinema 「ジュリオ・チェーザレ」(ヘンデル作曲、グラインドボーン音楽祭2005年)を観てきました。DVDにもなっている本作品は、クレオパトラ役のダニエル・デ・ニースを一躍有名にした公演。

映画館でオペラというのは何度か観た事があります。貴重な映像を大画面で観る事ができるのは有難いのですが、音量と音響がちょっと酷い。クラシックを知らない人には適正な音量というものが理解できていない、ただ単に「大音量であれば迫力がある」としか考えていないのでしょう。音は割れ、高音もヒステリック。クリスティ率いるエイジ・オブ・インライトゥメント管弦楽団の微妙なハーモニーが騒音としか聴こえないのが何とも哀しい。歌手の歌声は肉声のそれではなく、ハンドマイクを通した街頭演説さながら。

歌手のドアップ映像もつらい。ハリウッドのスターではない。大アップでの熱唱はビジュアル的に耐えることができません。

そのような音楽的、ビジュアル的悲惨な面があったとしても、デ・ニースのクレオパトラは素晴らしい。彼女が登場すると世界が全然変ります。ジュリオ・チェーザレ役のサラ・コノリーやセトス役のキルヒシュラーガーなど並み居るヘンデルを得意とする歌手陣を向こうにまわしての圧倒的な存在感。これにはデイヴィッド・マクヴィカーの演出によるところも大きいのだと思います。ドロドロした復讐劇に、少し軽目のエンタテのトッピングをかけている。その対比が上手い。

デ・ニースには文字通り「つま先」まで痺れてしまいます。でかい口、大きな眼。チャーミングにしてコケティッシュ、健康的な色香。いわゆるエロかわいいてやつでしょうか。最後、さながらミュージカルのように歌って踊る「Da tempeste il legno infranto」がアタマにこびりついて離れません。確かにデ・ニースがフィガロのスザンナ役を演じたならばハマリ役でしょう。

二度の休憩をはさんで227分。観るのも結構体力が要ります。デ・ニース観たさに映画館に脚を運びましたけど、さらに別のオペラを観たいかと考えると、この音響では勘弁といったところでしょうか。新宿では16日(金)までですから、観るならお早めにといったところでしょうか。

2007年12月24日月曜日

デ・ニース追記


kimataさんはデ・ニースを「華」ではなく「花」と評しましたが、間違いなく彼女は生まれながらにしてスターの素質を有しているように感じます。CDを一聴して人をひきつけてしまう能力、またはオペラの舞台で観客を虜にしてしまう魅力。それは本当に「一瞬」のことで、人は彼女に魅入られてしまったことにさえ最初は気づかないかもしれません。場を一瞬にして自分のものとしてしまう能力こそが、スターとか一流のソリストに見出されるものです。


そういう意味からはお嬢さん芸を思わせる「花」よりもむしろ「華」が適切という気もします。しかしそれでも「花」と書きたい欲求も抑えることが出来ないほどに、彼女の歌声は瑞々しい。歌う空間にパッとばかりに花びらが舞い上がります。それは彼女の鍛錬された歌唱力のなせる業で、そのパワーには驚きさえ感じます。


芸術的な深みという点では十分とは言えないかも知れません。しかし、こういう才能が年齢と経験を重ねることで、どのように変化をしていくのか、楽しみな演奏家です。


【音盤】デ・ニースのヘンデルに完敗!

これも、CLASSICAや#Credoを始めとするブログで強力にオススメ*1)だったCD。実はネットで話題になる前から買っていたのだけど、封を切る気力がなくて、やっと最近聴いてみたのです。いやはや、皆さん絶賛する訳が分かりました。まだ20歳のデ・ニースですが、若さがはちきれんばかりとでもいいましょうか。歌唱力の瑞々しさ、のびやかさ、躍動感、これは惹かれますね、まさに現代的な表現というのでしょう。

handel arias/Danielle de Niese
Danielle de Niese(s)、Les Arts Florissants・William Christie
DECCA 475 8746

ラメントな歌を歌っても、どこか明るさを感じます。同じヘンデルを歌ってもコジェナーのような「暗い情念」とは無縁です。これ程の明るさや突き抜け感はどこから生じるのかと思って調べてみますと、スリランカとオランダの血筋でオーストラリアに生まれ、国内で多くのコンクールに入賞した後,ロスアンジェルスに移り,15歳でロスアンジェルス歌劇場でプロデビュー*2)なのだそうです。

ライナーによりますと、両親は彼女の音楽的才能を伸ばすため6歳の頃からピアノ、歌、ダンスのレッスンを学ばせたようです。歌手としてのキャリアも若くして(ってまだ二十歳だって!)積んでいて、13歳にしてタングルウッド音楽祭に参加したのは最年少記録というとらしいです。

歌とともにダンスの才能もあり、彼女のインストラクターはダンスに専念するように言ったそうですが、彼女は歌を選んだようです。

"but singing has always been my main focus, the thing I get the most joy out of. It's the ultimate way I can express myself"

そうなんですね、この歌に対する彼女の愛情が、このアルバムからは溢れだしていて、それが聴くものをとことん圧倒してしまうのでしょう。彼女のダンスの才能が、ヴィヴィッドな躍動感として歌にあらわれているというのは私の思い込みかもしれませんが、コケティッシュにしてリズミカルに跳ねる彼女の姿が目に浮かぶようです。

というのも、kimataさんが紹介されていたDeccaの映像も良いのですが、ためしに、彼女を一躍有名にした'Giulio Cesare in Egitto'(2005年グラインドボーン)のYou Tubeの映像を観てください。

何と言っても、この小気味良い動き、猫のように軽いステップ、チャーミングな首の振り方! たった1分ちょっとの映像を何度観たことでしょう。同じ舞台での以下も必見でしょうか。

なんと優雅な動きでしょう。歌いながら、こんなに細やかな表現をするとは・・・! どちらも共演はサラ・コロニーのようです。

そんなデ・ニースの本アルバムは、得意のヘンデルのアリアから彼女自らヒロインの曲を集めたようです。

"I picked a lot of strong heroines who sing the strongest melodic and dramatic music possible, while also looking for intelligent characters in some of the lesser-known Handel operas"

という具合にして衝撃的にして必殺ビームを照射する本アルバム、必聴かと。内容に入る前に力尽きました! 顔立ちは私好みではありませんが、彼女の才能と歌唱力に撃沈です*3)

  1. ダニエル・デ・ニースのヘンデルに言及したブログ。他にもありそうですが、当面はこのくらい抑えておけばよろしいかと。

    CLASSICA
    #Credo
    Classical CD Information & Reviews
    おやぢの部屋2 ここではニースに関する話題がいくつか散見されます。http://jurassic.exblog.jp/4194020/←こことか。
    CLACLA日記
  2. 'Classical CD Information & Reviews'から引用
  3. 顔で歌を聴くわけぢゃありませんから。にしても、「情念」よりも「若さ」に惹かれるとは、やれやれぢゃわい・・・