東京都内の某室内楽専用ホールで音響改善工事が行われたとかで、改善後のお披露目兼音響測定会の機会を得たので行ってきた。
音響設計者にも会ったので今回の改修の経緯を伺ってみた。ホールは出来てから10年近く経っているのだが、ホールが出来て直ぐにピアノ演奏用に向くようにデッドなホールに改装してしまったたらしい。そのため弦関係の演奏家からは苦情が多かったとのこと。このたびホールの所有者が室内楽専用ホールに改めたいとの意向を示し音響改善を行った(というか改装前の原設計に戻した)とのこと。目指したのは、ホールの音響性能の指標のひとつである残響時間で示すならば、約1.2秒程度にすること。測定の結果、空席時および客が入った状態でほぼ想定の残響時間が得られたらしい(ホールの性能は残響時間だけで測られるものではないのだが)。
さて、そういうホールでの演奏は、アマチュアの弦楽四重奏によるモーツアルトのティベルティメントと、N響コンサートマスターの篠崎史紀氏によるヴァイオリン演奏会であった。弦四はアマチュアながら、ハイレベルな演奏。篠崎さんのソロに至っては言うことは何もない。アンコール三曲を含め、ヴァイオリンを堪能させていただいた。
音を聴いた感想としては、個人的には木質系の柔和な響きを特色とするホールになっているように思えた。一方で伴奏のピアノの音がモコモコと聴こえ、もう少し響いても良いのではないかと思ったものである。今回の改修は残響時間を長くする方向のものであったと後で聞き、何と私の耳は主観的で当てにならないかと思った次第。ホールの良し悪しなど聴き分ける高度な耳など持ち合わせていないようだ。
時代は大きな転換期、自分もとうに還暦を過ぎた。何に関心があり、どう考えていたか、記憶と思考の断片をつなぐ作業。将来の何に「投資」するか、自分を断捨離したときに最後に残すものは何か。私的なLife Log、ネット上の備忘録。
2003年8月19日火曜日
2002年1月9日水曜日
音の良いホールと札幌のキタラ
札響のニューイヤーコンサートに桂札幌市長が聴きにいらしており、キタラの音響の良さを説明されていた。いわく、昨年欧州のある団体が世界のホールの調査をした。結果として、調査した中で一番音響が良かったのは札幌のキタラ、次にベルリンのフィルハーモニー・ホール、三番目がサントリーホールであった、とのこと。
調査の詳細が分からないのでコメントできないが、キタラの音響の良さは尾高氏も声高に主張しているし、お世辞もあろうが、キタラで演奏した演奏家が口を揃えていることでもある。
サントリーホールもキタラも、音響設計においては世界的にもおそらく有名な永田音響設計が担当している、音響設計者が同じなのだ。しかし、同じホールは二つと存在しない。私はサントリーホールで何度か聴いた印象だと、サントリーの方が勝っているように思っている。それは特に1階席で顕著である。キタラの場合は、例えばマーラーなどの巨大な曲の音が頭上を超えて飛んでいってしまうように感じる。一方でサントリーの1階席は、音響の波を全身で受けるかのような迫力で、すさまじい音の洪水が飛び込んでくる。演奏家など同一条件での比較ではないので、あくまでも印象でしかないのだが、両者を聴かれた方はいかがであろう。
それにしても、世界一かどうかはさておき、キタラの音響が良いことには同意するものだ。音の良さを物理的に表現することは難しい。音響特性においては、よく残響時間が問題にされる。正確を期すために、「音響技術」(日本音響材料協会)No.101(vol.27 no.1 1998.3)に「札幌コンサートホールの音響設計」と題して、永田音響設計の豊田泰久氏が投稿していたので紹介したい。
ちなみに私は建築音響工学の専門家ではないので用語の解説は省略する。これを読むと、単に500Hz残響時間だけを云々することが、ひとつの目安ではあるものの、それにより音響的な特徴を述べていることにはならないことに気づかれるだろう。
------- 以下、「音響技術」より(本文をアレンジして転載)-------
1.大ホール
御存知のとおり、アリーナ型のホールですが、これは札響およびPMFメンバー他有識者との検討の中で、大阪のザ・シンフォニーホール、東京のサントリーホールの印象が良かったことから、コンペ要項に盛り込まれた。
2.室形状
天井全体の基本的な形状は、ベルリン・フィルハーモニーやサントリーホールと同様の、ホール中央部で最も高い山形形状を採用している。天井は反射音を重視して、15cm厚のコンクリート板となってる。
ステージ上の演奏者とステージ近傍の客席に時間遅れの小さい初期反射音を分布 させるために、ステージ上部に一体吊り下げ型音響反射板を設置。反射板は、繊維 強化せっこうボードの5枚積層したものを使用。ベルリン、サントリーなども同様 の考え方であるが、本ホールでは小型の反射板をいくつか吊すのではなく、全体が 一体となった大型の反射板としている。これは、低音域にまで効果的になるように 意図したためである。
3.室容積
ホールの諸元は表1のとおり。室形状の検討に当たり、客席全体にわたり有効な初期反射音が得られる形状とすることを最優先とした結果、室容積は28,800m3と大きなものとなった。これ は同規模のサントリーホールなどを上回る数値である。ホールの室容積は、通常10m3/席が望ましいとされている。最近は、室容積 は大きくなる傾向にあり、KITARAも14m3程度と従来の推奨値を上回る数値となっている(表2)。 しかしながら、この値ははホールの形状や客席の寸法などに大きく影響を受けため 一つの目安に過ぎないと考えるべきである。
表1 大ホール諸元
表2 類似ホールの室容積、気積の比較
4.音響特性
残響時間の測定結果は、空席時2.2秒、満席時2.0秒(500Hz)であり、 大ホールにおいては、空席時と満席時の差が小さいことが際立っている。これは、 客席のクッションを通常よりも厚手のものを採用したためである。
残響時間の周波数特性も、250から2kHzまで、ほとんど平坦な特性、 63から125Hz域においては、若干長めとなっており、当初の設計のねらいの 通りである。ちなみに、空調騒音については、NC15以下、スピーチ明瞭度指数(STI) は、0.46~0.54でFairの結果を得ている。
◇ ◇ ◇ ◇
最後に、筆者は、ホールというものは、ハード面ばかりではなくソフトがあって こそ成り立つもので、今回はPMFと地元を代表する札響の存在意義が非常に大き いことに言及し、欧米のホールのレジデント・オーケストラの存在に触れた上で、本ホールと札響の今後 の活動に期待を寄せている。
調査の詳細が分からないのでコメントできないが、キタラの音響の良さは尾高氏も声高に主張しているし、お世辞もあろうが、キタラで演奏した演奏家が口を揃えていることでもある。
サントリーホールもキタラも、音響設計においては世界的にもおそらく有名な永田音響設計が担当している、音響設計者が同じなのだ。しかし、同じホールは二つと存在しない。私はサントリーホールで何度か聴いた印象だと、サントリーの方が勝っているように思っている。それは特に1階席で顕著である。キタラの場合は、例えばマーラーなどの巨大な曲の音が頭上を超えて飛んでいってしまうように感じる。一方でサントリーの1階席は、音響の波を全身で受けるかのような迫力で、すさまじい音の洪水が飛び込んでくる。演奏家など同一条件での比較ではないので、あくまでも印象でしかないのだが、両者を聴かれた方はいかがであろう。
それにしても、世界一かどうかはさておき、キタラの音響が良いことには同意するものだ。音の良さを物理的に表現することは難しい。音響特性においては、よく残響時間が問題にされる。正確を期すために、「音響技術」(日本音響材料協会)No.101(vol.27 no.1 1998.3)に「札幌コンサートホールの音響設計」と題して、永田音響設計の豊田泰久氏が投稿していたので紹介したい。
ちなみに私は建築音響工学の専門家ではないので用語の解説は省略する。これを読むと、単に500Hz残響時間だけを云々することが、ひとつの目安ではあるものの、それにより音響的な特徴を述べていることにはならないことに気づかれるだろう。
------- 以下、「音響技術」より(本文をアレンジして転載)-------
1.大ホール
御存知のとおり、アリーナ型のホールですが、これは札響およびPMFメンバー他有識者との検討の中で、大阪のザ・シンフォニーホール、東京のサントリーホールの印象が良かったことから、コンペ要項に盛り込まれた。
2.室形状
天井全体の基本的な形状は、ベルリン・フィルハーモニーやサントリーホールと同様の、ホール中央部で最も高い山形形状を採用している。天井は反射音を重視して、15cm厚のコンクリート板となってる。
ステージ上の演奏者とステージ近傍の客席に時間遅れの小さい初期反射音を分布 させるために、ステージ上部に一体吊り下げ型音響反射板を設置。反射板は、繊維 強化せっこうボードの5枚積層したものを使用。ベルリン、サントリーなども同様 の考え方であるが、本ホールでは小型の反射板をいくつか吊すのではなく、全体が 一体となった大型の反射板としている。これは、低音域にまで効果的になるように 意図したためである。
3.室容積
ホールの諸元は表1のとおり。室形状の検討に当たり、客席全体にわたり有効な初期反射音が得られる形状とすることを最優先とした結果、室容積は28,800m3と大きなものとなった。これ は同規模のサントリーホールなどを上回る数値である。ホールの室容積は、通常10m3/席が望ましいとされている。最近は、室容積 は大きくなる傾向にあり、KITARAも14m3程度と従来の推奨値を上回る数値となっている(表2)。 しかしながら、この値ははホールの形状や客席の寸法などに大きく影響を受けため 一つの目安に過ぎないと考えるべきである。
表1 大ホール諸元
室容積室表面積 | 8,200m2 | 客室数 | 2,008席 |
気積 | 14.3m3/席 | 最大長 | 60m |
最大幅 | 50m | 最大高さ(舞台面から) | 22m |
舞台最大幅 | 22.5m | 舞台最大奥行 | 13.5m |
| 舞台面積 | 275m2 |
表2 類似ホールの室容積、気積の比較
| ホール名 | 客室数 | 室容積(m3) | 気積(m3/席) |
| サントリーホール(86) | 2,006 | 21,000 | 10.5 |
| 東京芸術劇場(90) | 2,015 | 25,000 | 12.5 |
| 札幌 コンサートホール (97) | 2,008 | 28,800 | 14.3 |
| ディズニー・コンサートホール(01予) | 2,350 | 32,000 | 13.6 |
4.音響特性
残響時間の測定結果は、空席時2.2秒、満席時2.0秒(500Hz)であり、 大ホールにおいては、空席時と満席時の差が小さいことが際立っている。これは、 客席のクッションを通常よりも厚手のものを採用したためである。
残響時間の周波数特性も、250から2kHzまで、ほとんど平坦な特性、 63から125Hz域においては、若干長めとなっており、当初の設計のねらいの 通りである。ちなみに、空調騒音については、NC15以下、スピーチ明瞭度指数(STI) は、0.46~0.54でFairの結果を得ている。
◇ ◇ ◇ ◇
最後に、筆者は、ホールというものは、ハード面ばかりではなくソフトがあって こそ成り立つもので、今回はPMFと地元を代表する札響の存在意義が非常に大き いことに言及し、欧米のホールのレジデント・オーケストラの存在に触れた上で、本ホールと札響の今後 の活動に期待を寄せている。
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