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2003年1月18日土曜日

【音盤】田部京子のメンデルスゾーンとシフのバッハ

以前紹介したDENONのCREST1000シリーズの中からピアノ曲集を二つほどゲットした。とにかく1000円なのだから買って損はないと思う。(現在はシリーズ第二段が発売中)
田部京子/メンデルスゾーン「無言歌集」 (COCO-10450)

こういう曲を聴いていると音楽を聴く至福を感じることができると同時に、とやかくレビュを書くことの空しささえ感じてしまう。

「メンデルスゾーンのもつドイツロマンの抒情性」「静謐さ」「珠玉の名品」「ナイーブな音楽世界」「癒し系」 なるほどとは思うが、どれもが陳腐な言葉だ。

ぐたぐた言わずに静かに耳を傾けるがよい。ただゆったりと受け入れるのみ。そうすると、がさがさになった精神が、やさしく瑞々しいもので満たされてゆくのを感じることができる。非常に得をしたと感じるお薦めの1枚である。





アンドラーシュ・シフ/バッハ「インヴェンションとシンフォニアBWV772a-801」(COCO-70448)

私はシフの弾くバッハが好きだ。飾ったりひけらかすことのない、どちらかというと生真面目にも聴こえる音楽かもしれない。だからだろうか、深いところに静かにか語りかけてくれる。

バッハのインヴェンションはピアノを少しでもかじったことのある人ならば弾いたことがあるだろう。あるいは自分が弾かなくても隣に住む中学生や高校生が弾いているのを聴いたこともあるかもしれない。そんな曲だが、インヴェンションはまさにバッハを聴く喜びを感じさせてくれる曲だ。

彼はよく「グールド以来のバッハ弾き」と評される。私にはバッハを評することも、グールドとシフを比較することも適わないのだが、シフの演奏を聴くとグールドの演奏はやはり刺激的過ぎると感じてしまうのも事実である。

2003年1月5日日曜日

ヒラリー・ハーン/メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲

メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 作品64

 
演奏:Oslo Philharmonic Orcestra 指揮:Hugh Wolff 録音:April 17 & 19-20, 2002 

さても今更ながらにメンコン(メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲)かと思う。

この超通俗名曲、幾多の演奏を耳にしただろうと思い浮かべ、ふと我がCD棚を探してみると驚くべきことに、メンコンは1枚も所有していないことに気付いた。いったいどこで耳タコ状態となるほどに聴いたと言うのか、誰の演奏に親しんだというのか。そういう記憶一切が、メンコン=通俗名曲という固定概念によって形成されたものなのかしらと訝ってしまう。 

そこでヒラリーのメンコンである。先にも書いたように誰のメンコンの演奏が記憶に刷り込まれているのかは定かではないが、ここで演奏されているのは、いままでのようなメンコンではないことに気付かされる。
もともとヴァイオリンのヴィルトオーゾ性を際立たせるような曲であるが、ヒラリーの技は冴えに冴えわたっている。彼女がメンデルスゾーンのコンチェルトを学んだのが11歳のとき、そして翌年にはそれを演奏しているという。24歳の彼女にしてすでに12年の付き合いの曲であるわけだ。 

彼女の演奏は、ショスタコーヴィチでもそうだったように情に傾かない。洒落ではないが、まさにヒラリヒラリと華麗に、しかも物凄いスピードで駆け抜けている。これだけのスピードでありながら(比較はできないが)演奏からは余裕のような雰囲気が漂ってくるところがタダモノではない。 

スピードとともに音色の艶やかさにも感歎する。ショスタコのときのような、若干鋭利な音作りとは印象を変えているのだろうか、ここでは女性的にしてでふくよかで温かみのある音に仕上げているように聴こえる。それでいて、ともするといやらしさを伴うような音ではなく、あくまでもヒラリーらしい怜悧さを残している。 

こういうメンコンを好まない人もいるかもしれない。しかし私には、むしろ抒情を敢えて殺ぎ落としたかのような華麗にしてスポーティーな(しかし体育会系では決してない)メンコンも好ましいと思える。

もっともメンコンを何度もレビュのために聴き直したり聴き比べたいとも思わない。雑な感想だがこれまでにしておこう。