演奏:Oslo Philharmonic Orcestra 指揮:Hugh Wolff 録音:April 17 & 19-20, 2002
さても今更ながらにメンコン(メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲)かと思う。
この超通俗名曲、幾多の演奏を耳にしただろうと思い浮かべ、ふと我がCD棚を探してみると驚くべきことに、メンコンは1枚も所有していないことに気付いた。いったいどこで耳タコ状態となるほどに聴いたと言うのか、誰の演奏に親しんだというのか。そういう記憶一切が、メンコン=通俗名曲という固定概念によって形成されたものなのかしらと訝ってしまう。
そこでヒラリーのメンコンである。先にも書いたように誰のメンコンの演奏が記憶に刷り込まれているのかは定かではないが、ここで演奏されているのは、いままでのようなメンコンではないことに気付かされる。
もともとヴァイオリンのヴィルトオーゾ性を際立たせるような曲であるが、ヒラリーの技は冴えに冴えわたっている。彼女がメンデルスゾーンのコンチェルトを学んだのが11歳のとき、そして翌年にはそれを演奏しているという。24歳の彼女にしてすでに12年の付き合いの曲であるわけだ。
彼女の演奏は、ショスタコーヴィチでもそうだったように情に傾かない。洒落ではないが、まさにヒラリヒラリと華麗に、しかも物凄いスピードで駆け抜けている。これだけのスピードでありながら(比較はできないが)演奏からは余裕のような雰囲気が漂ってくるところがタダモノではない。
スピードとともに音色の艶やかさにも感歎する。ショスタコのときのような、若干鋭利な音作りとは印象を変えているのだろうか、ここでは女性的にしてでふくよかで温かみのある音に仕上げているように聴こえる。それでいて、ともするといやらしさを伴うような音ではなく、あくまでもヒラリーらしい怜悧さを残している。
こういうメンコンを好まない人もいるかもしれない。しかし私には、むしろ抒情を敢えて殺ぎ落としたかのような華麗にしてスポーティーな(しかし体育会系では決してない)メンコンも好ましいと思える。
もっともメンコンを何度もレビュのために聴き直したり聴き比べたいとも思わない。雑な感想だがこれまでにしておこう。
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