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2005年3月29日火曜日

【音盤】ビーバー:描写的なヴァイオリン・ソナタ イ長調

先に寺神戸さんのヴァイオリンによるビーバーの曲を紹介しましたが、この盤の最後に納められている「描写的なヴァイオリン・ソナタ イ長調」という曲も秀逸です。このソナタは、様々な動物の鳴き声を描写した曲で、「ナイチンゲール(Nachtigal)」「かっこう(Cu Cu)」「蛙(Fresch)」「雌鶏(Die Henn)」「雄鶏(Der Hann)」「うずら(Die Wachtel)」「猫(Die Katz)」それになぜか「小銃兵の戦い(Musquetir Mars)」が加わり、アルマンド(Allemande)で終わる11分半ほどの短く明るい曲です。




この曲について寺神戸さんは、以下のように述べています。


��シュメルツァーやヴァルターなどの)流れの中で一番"動物園的"な曲がこのビーバーのソナタで、最も写実的な1曲です。面白いのは、そうした描写的な曲とその間にはさまれる「純音楽的」な曲との落差で、それがあまりにも激しいことです。まるで現代曲のようなそのコントラストは、やはりとてもバロック的だと思います。


寺神戸さんは作品としては凄く素晴らしいとは思えないと言っていますが、非常に純度の高い音楽になっていると思います。彼の宗教曲が一方で宗教的な面を追及すればするほどに、音楽的に純度が高まり別の次元に到達しているように感ずるのですが、この曲も極めて描写的でありながらも、それとは対極の境地を獲得しつつあるように思えます。


さらに、これら9種類の描写をヴァイオリン1本で表現しつくしている点も凄いものです。技巧的な奏法を駆使し多様な音色の使い分けての表現は、まさにヴァイオリンの持つ可能性を、軽やかに遊びながら追求しているようでさえあり、当時のヴァイオリンの名手ビーバーならではといったところです。


この「遊びながら」と思えるところが、いかにも洒脱であり、一方でビーバーの諧謔さえ感じるというのは書きすぎでしょうかね。ビーバーなど、この1枚しか聴いたことないですから。

[補足]

"ビーバー 描写的"で検索かけたらclassicaの「無人島の一枚」のページに漂着。寺神戸さんの盤ではないものの、ビーバーを選ぶ人が居るんだなと感心したら、何とその下にk-tanakaさん!!のオススメの1枚が(ハイドン:弦楽四重奏曲 作品76の1-3)恐るべしclassica、つーか、k-tanakaさんつーか・・・デジタルつーかー、つーか・・・>もうないって

2005年3月21日月曜日

【音盤】寺神戸亮/ビーバー:ヴァイオリン・ソナタ集

随分前になりますが、Syuzo's Weblogでビーバーにつてのエントリーがありました。その時は別段気にも留めていなかったのですが、DENON CREST1000シリーズに寺神戸亮さんのビーバー集を見つけたので、そういえばと思い出し聴いてみたところ、これが抜群に良くて、まさに宝物を見つけたかのような気になりました。



ビーバー:ヴァイオリン・ソナタ集
  1. ソナタ 第5番 ホ短調
  2. ソナタ 第6番 ハ短調
  3. ソナタ 第8番 イ長調
  4. ロザリオのソナタよりバッサカリア ト短調
  5. ロザリオのソナタよりソナタ 第6番 ハ短調「嘆き」
  6. 描写的なヴァイオリン・ソナタ イ長調

  • 寺神戸 亮(バロック・ヴァイオリン)、シーベ・ヘンストラ(チェンバロ、オルガン)、上村かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ)
  • 1994年8月11、12、15~17日 DENON CREST1000 COCO-70742


寺神戸さんについては今更言及するまでもありませんが、この演奏はコレッリのヴァイオリン曲集の姉妹編に当たるのだそうです。


ビーバー(1644-1704)は解説によると17世紀屈指のヴァイオリンのヴィルトゥオーゾ・作曲家とされております。バッハよりも半世紀も前に、ヴァイオン・ソナタにおいて、こんなにも豊穣な世界があったということに驚かされます。技巧の域はきわめて高く、宗教的な色彩を帯びながらも、そこに拘泥しすぎずに音楽的な自由さまでも獲得しているように思えます。


最初に納められているソナタ 第5番 ホ短調を聴くだけで、ビーバーの哀愁を帯びながらも、敬虔で華やか内面世界の表出に聴き惚れてしまいます。主題の変奏が次第に高まっていくさまはスリリングでさえあります。


ソナタも良いですが、有名なのはやはり「ロザリオのソナタ」でしょうか。「キリストの秘蹟に基づく15のソナタと、パッサカリア」という副題がついており、寺神戸氏が外側のドラマだけでなく聖書の意味の核心を付く内面的な表現と解説するように、非常に錬度の高い曲に思えます。


「守護天使」と題された《パッサカリア》は、重音奏法を用いたポリフォニック(多声的)な作品で、バッハのシャコンヌの先駆けのような曲ですが、聖書的世界には全く疎い私でも、この曲を聴くだけで祈りにも似た気持ちと、心の奥底に安らぎのようなものが宿るのを感じます。おそるべしビーバー。

音盤狂日録にもビーバーの記述がありましたので、リンクを紹介しておきます。








2004年6月26日土曜日

【音盤】寺神戸亮/コレッリ:ヴァイオリン・ソナタ集作品5より

コレッリ:ヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ集
  1. 第7番 ニ短調
  2. 第8番 ホ短調
  3. 第9番 イ長調
  4. 第10番 ヘ長調
  5. 第11番 ホ長調
  6. 第12番 ニ短調《ラ・フォリア》
  • 寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン)、シーべ・ヘンストラ(チェンバロ/オルガン)、ルシア・スヴァルツ(バロック・チェロ)
  • 録音:1994年8月 オランダ、デン・ハーグ、旧カトリック教会

DENONのCREST1000シリーズから発売されている寺神戸亮氏によるコレッリのヴァイオリンソナタ集を聴いてみました。

コレッリ(1653-1703)はバロック・ヴァイオリンの象徴とも言うべき存在なんだそうです。 CD解説によるとコレッリは宗教作品や声楽曲(オペラを含む)を全く残さなかったそうで、しかも名声に比して残された作品数が僅少なのであるそうです。というのもコレッリの遺言で未出版の作品のほとんどを破棄させたからで、それだけに現存する作品は厳選されたものであるとのこと。

この盤ではコレッリのヴァイオリン・ソナタ集5番のうち後半の6曲が納めているのですが、果たして聴いてみますと、一聴するだけでコレッリの魅力に取り付かれてしまいます、いやコレッリの魅力なのか寺神戸氏のヴァイオリンの魅力なのか、実はそれは判然とはしないのですが。

短調の翳りと明るさとが微妙な具合にブレンドされた曲調、長調の軽ろやかで優雅な曲調など、どれも好ましいもので、様々な心象情景が浮かんでは消えていきます。技巧を凝らしたブイブイ言わせる曲ではないかもしれませんが、休日の午前などに珈琲でも飲みながら聴いていると、それだけで気分が癒されてきます。とは言いましても、ベタなヒーリング曲では全くなく緩急の楽章の繰り返しは変化に満ちていて刺激的でもあります。

しかし何と言ってもこの盤の中では《ラ・フォリア》が聴きどころでしょうか。フォリアとはスペインの古い舞曲を起源とする曲で、本来は狂気を意味する言葉あったようです。この曲もイベリア半島起源とされる古い舞曲の16小節の主題を元に、23の変奏が繰り広げられていくというものです。哀愁を帯びた旋律が、ヴァイオリンの技巧を駆使して変化してゆくさまは、単純であるが故に聴き進むにつれ得も言われぬ凄みを帯びてきます。この1曲を聴くだけでもこのCDの価値はあるかもしれません。

詳しい解説はネット上にあるので興味のある方は読んでください。ほとんどCDライナー引き写しの文章を読むことができますので便利です。

2004年1月26日月曜日

【音盤】テレマン:パリ四重奏曲集

以前紹介したテレマンの「6つの四重奏曲(クァドリ)」に続く四重奏曲です。こちらも「クァドリ」にも増して素晴らしい音楽に仕上がっています。

金曜日に所沢で有田氏の演奏会が催されたのですが、一度彼の演奏を生で聴いてみたいものだとつくづく思わせる演奏です。


有田正広:テレマン/パリ四重奏曲
  1. 四重奏曲 第1番 ニ長調 TWV43:D3
  2. 四重奏曲 第2番 イ短調 TWV43:a2
  3. 四重奏曲 第3番 ト長調 TWV43:G4
  4. 四重奏曲 第4番 ロ短調 TWV43:h2
  5. 四重奏曲 第5番 イ長調 TWV43:A3
  6. 四重奏曲 第6番 ホ短調 TWV43:e4
  • 有田正弘(フラウト・トラヴェルソ) 
  • 寺神戸亮(バロック・ヴァイオリン) 
  • 上村かおり(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 
  • クリストフ・ルセ(チェンバロ)
以前紹介したテレマンの「6つの四重奏曲(クァドリ)」に続く四重奏曲です。1730年にハンブルク出版された「クァドリ」がパリでも注目を集め、テレマンをパリへ招聘しました。その時に作曲されたのが、ここに納められた六つの四重奏曲です。テレマンを招聘したのは当時の名手であるプルートのプラヴェ氏(彼自身のフルート曲も有名)、ヴァイオリンのギニョン氏、ガンバのフォルクレ氏、そしてチェロのエドワール氏などです。

「クァドリ」でもそうでしたが、この曲集は明らかにプロの演奏者のための音楽になっています。当時は、アマチュア演奏家のためにも曲集は作曲されており、例えばテレマンの「忠実な羊飼い」などが、フルート吹きには有名でしょうか。

CD解説によれば「おそらくテレマンが書いた最もフランス的な作品」とあります。しかも"プロ仕様"の曲だけあって、きわめて音楽的かつ躍動的で華やかな色彩にあふれた音楽に仕上がっているように思えます。

この演奏においても有田氏のフルートトラヴェルソの音色は際立っているのですが、先の「クァドリ」と比べてピッチが高い(a'=415)せいでしょうか、音色の粒立ちや切れが一層鮮やかです。私はこのCDの第1番ニ長調の冒頭をはじめて聴いたときに、その音色の素晴らしさに思わず声を上げてしまいました。テレマンのパリに対する思いの表れとも受け取れます。今も昔もパリはまさに「華の巴里」であったということなのでしょうか。ヴァイオリンの寺神戸氏についてまったく触れておりませんが、私は寺神戸氏として意識して音楽を聴いたことがないので、感想らしものをまだ書くことができません。

「クァドリ」も確かに素晴らしい演奏なのですが、こちらと比べてしまうと、どうしてもくすんだ色彩に感じられてしまいます。それが曲の完成度によるものなのか、あるいは演奏や楽器によるものなのかは私の拙い知識では分かりません。しかし、私はこの2枚組みのCDを飽くことなく何度も聴いてしまっています。

ちなみにこのCDは文化庁芸術作品賞という有難い章を受賞しているそうです。