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2002年6月2日日曜日

第14回 日本フルートフェスティバルin札幌での加藤元章の演奏

日時:2002年6月2日 14:00~
場所:札幌市民会館
フルート:加藤元章
ピアノ:石橋尚子

タファネル:ミニヨンの主題によるグランドファンタジー
J.S.バッハ:無伴奏パルティータ
カミュ:シャンソンとバディネリ
サラサーテ:カルメンファンタジー
ゲーリー・ショッカー*1):インメモリアム In memoriam*2)
サン=サーンス:アレグロモルト

札幌でのフルートフェスティバルにゲストとして加藤元章さんが呼ばれた。生加藤さんを見るのも聴くのも始めてである。加藤さんが日本屈指のテクニシャンであることは聞き及んでいた。また、彼の精力的な録音活動も知ってはいた。それでも、今日の演奏には、脳天を吹き飛ばされてしまった、凄いの一言に尽きる。

彼の吹く楽器はプラチナ製である。プラチナというのは金よりも高く重い楽器であるのだが、そこから鳴らされる音の柔らかさ、力強さ、そして豊穣さときたら何と例えたらよいのだろう。芯はしっかりしているのだが、独特の懐の深さを感じるのだ。

音楽は加藤さんらしく技巧を要求するタファネルのファンタジーから始まった。音楽の自在さ、音色の変化の幅の広さ、そして信じられないような響きの低音から、これまた超人的な高音部分でのすばやいパッセージなど、何もかもがすごい。魅了されてしまうというのは、こういうことだろう。わたしはしばらく空いた口がふさがらなかった。

技巧だけでバリバリ押しまくっていたわけではない。2曲目のバッハ無伴奏が始まったとき、わたしはバッハが教会音楽のために作曲していたという事実を、今更ながらに思い知らされた。彼の音楽の彼方から教会の大伽藍と壮大なるパイプオルガンの響きが聴こえるように感じてしまった、実はこれにもかなり、びっくりしたのだが。

比較的静かな曲であるカミュやゲーリー・ショッカー(Gary Schocker)などにおいても、充分に聴く者の深くに染み込んでゆくような演奏であった。

そうは言ってもだ、サラサーテのカルメンファンタジーなどを聴いてしまうと、なんだか細かいところはどうでもいいやてな気になってしまう。とにかく凄い(今日はこればっか)。いやはやフルートというのを、こんなにもいともたやすく自在に扱えるものなんだろうか。めまぐるしい音の変化とダイナミックさ、スピード感、そして音曲げの技巧などを駆使して作り上げる音楽の素晴らしさ、もはやソロリサイタルと変わるところがない、ブラボーの一言だ。

彼の演奏からは偏執的で貪欲、旺盛な探求心と持ち前の明るさと楽天性、そして強靭な意志による弛まぬ努力というものを感じた、何かエネルギーを発散させているかのような印象であった。従って、後にフルートオケと2曲ほどアルルの女とハンガリー田園幻想曲を演奏したのだが、もうおなかがいっぱいという感じで、もはや受け付ける事ができなかった>ヤワなヤツ
  1. ゲーリー・ショッカー(Gary Schocker)
    アメリカのフルート奏者、作曲家、ピアノ奏者。ジュリアード音楽院で、J.ベーカーに師事。作曲と演奏の両面で、精力的な活動を続けている。
  2. イン・メモリアム(In memoriam)
    標題は「…を記念して」「…を悼んで」の意味。1993年出版。

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