2006年11月19日日曜日

展覧会:「スーパーエッシャー展」Bunkamuraザ・ミュージアム


Bunkamuraザ・ミュージアムで開催されている「スーパーエッシャー展」を観てきました。作品はオランダのハーグ美術館所蔵のものです。


これほど大規模に、そしてエッシャーの軌跡を辿るように彼の作品を観るのは私には初めてのこと。


♪エッシャー、エッシャー、スーパーエッシャー、我らがスーパーエッシャー♪(>ヲヤジ年代しか知らねーってば)






作品はほぼ年代順に並べられているようです。初期のイタリアやスペインの風景画や細密な昆虫画は見る機会が少ないながらも、版画作品として充分に魅力的です。観察眼の鋭さと類稀なデッサン力そして緻密さは、数学者のそれに通ずるものを感じます。


彼が音楽ではバッハが好きであったということは成る程と思わせます。バッハの音楽的構築性は数学的でありますし、絵画に無限性と秩序を表現したエッシャーとは共通点があるのでしょう。平均律を記号楽譜的に表現した作品は武満徹をさえも思わせて興味が尽きません。


ギルダー紙幣のための下絵に見られる高度なデザイン性にも目を見張るものがあります。コンピューターなどのない時代に、あのような数学的な図像を描くという技術。芸術家の偏執的なまでの腕の技にはほとほと驚かされます。


サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」でも紹介されていた《円の極限 Ⅳ(天国と地獄)》もそうです。周辺に行くほどに細分化された繰り返しの図形は曲面の中に無限を表現しており、そのデザイン性とともに完成度が極めて高い作品だと思います。数学的にはモジュラー形式とか双曲空間を視覚的に表現したものらしいですが、私には難しいことは良く分かりません。


彼は数学や結晶学からのアイデアに触発されて作品に応用しています。入れ子構造の平面の正則分割も無限運動を繰り返す水路も、数学者ペンローズのアイデアを応用したものであることは有名です。思い起こせば私が始めてエッシャーを知ったのも、小学生の頃読んだ熱力学の法則や永久機関が存在しないことを書いたブルーバックスの新書本であったように思います。彼の作品が同業者よりも数学者や物理学者、心理学者などに多くの影響を与えたのも当然といえば当然でしょうか。


彼の興味のモザイクである様々なモチーフが作品に結実してゆく様を観ることは非常に興味深いものでした。ボッシュの絵の素材がエッシャーの作品に用いられていることなど初めて知りましたし。


展示作品をニンテンドーDSの解説に沿ってゆっくり眺めると、ゆうに2時間はかかりました。それでも極めて秀逸な展覧会ですし充分に楽しめるものだと思います。


作品紹介は毎度お世話になっているTakさんの弐代目・青い日記帳で詳しいです。