2007年2月19日月曜日

国立新美術館と黒川紀章展



六本木の東京大学生産技術研究所(生産研)の跡地に建設された国立新美術館に行ってきました。企画展示が目的というよりは、建物を観に行く事が目的、建築家 黒川紀章の設計によります。うねるようなガラスの曲面の写真は新春のマスコミ紙上を賑わしました。生産研の建物は、もとはといえば旧歩兵第三聯隊兵舎として利用されていたものです。この建物はわが国最初の本格的鉄筋コンクリート造兵舎建築として建築的価値を有していたとともに、2.26事件の舞台ともなった歴史的意義を持っていました。


当然、建築学会などは保存を要望していましたが、取り壊され左のような「断片」が別館として免罪符的に残されて現在に至ったわけです。




私は過去の老朽化した建物をむやみに保存するという立場には与しませんが、経済効率を全面肯定した破壊と再生にも疑問を感じています。この建物がどういう経緯で黒川氏の設計となったかは分かりませんが、いずれにしても自ら収蔵作品を持たないというコンセプトで国内最大級の展示場(14,000㎡)を有する壮大な建物が出来上がりました。



1月21日(日)~3月19日(月)にかけて「黒川紀章展 -機械の時代から生命の時代へ-」という展覧会も開催されており彼の作品を振り返ることができます。


その中で黒川氏は、自らの代表作である「ソニータワー大阪」が建築家 大江匡氏の計画で建替えられることに対し、「本気か!」と訴えています。展覧会入ってすぐに、建物の写真とともに、とてつもない大きさのキャッチ(文字)が目に飛び込みますので、事の次第を予め知ってはいても、かなりドキリとします。「国立」の名の下の企画展で個人名指しでの批判は、かなりのものです。


中銀カプセルの構想をオフィスビルに(ショールーム)として展開した重要な作品であったが、取り壊され建築家大江匡氏が新計画をつくっていると聞いている。 本気か!


黒川氏は相当怒っているようです。展覧会出口では紋付ハカマ装束に日本刀を携えて来館者を睨んでいます。



私は黒川氏の建築に共感したことは、ほとんどありませんし、いわゆる彼らの唱えたメタボリズム建築も、ちっとも良いとは思いませんので、解体されることも時代の流れかなという気はします。彼の作品に「都市文化遺産」としての価値があるとしたら、それはコンセプトにおいてであるように思えるのです。メタボリズム、サスティナブル建築という概念には賛同しますよ、間違ったことは言っていませんから。


そもそも、黒川氏だけに限りませんが建築家というのはムツカシイ言葉で自らの作品を語りたがります。黒川氏のキーワードは「共生の思想」「メタボリズム」「唯識思想」などなど・・・、凡人の私には何のことやらです。彼のコンセプト・ワークと出来上がった建物の落差に眩暈を覚えることもしばしばです。


だからというわけではないのですが、どうも私は凡人理解不能な言葉を吐くタイプの建築家という人種が信じられません。建築において重要なのは使い、住むことです。デジカメや車や炊飯器にコムツカイ コンセプトや哲学は不要なように、建築だけが思想にまみれているのは、建築家の傲慢を吐露するための呪文でしかないと考えるのは私だけでしょうか。写真のように「断片」を残された旧歩兵第三聯隊兵舎は(表参道ヒルズの同潤会アパートでもそうだったように)、無残としかいいようのない姿を晒しています。