2002年3月16日土曜日

森圭吾&髙橋聖純デュオコンサート

演奏:森圭吾、髙橋聖純
日時:2002年3月16日(土)18時30~20時
場所:メッセビル6階(札幌)

C.P.Eバッハ: ソナタ E-dur
(フルート:森&髙橋)
ブゾーニ: ディベルティメント
(フルート:髙橋 ピアノ:森 可奈子)
タファネル: 魔弾の射手幻想曲
(フルート:森)
ドップラー: アンダンテとロンド
(フルート:森&髙橋)
(ピアノ:森 可奈子)


何とも贅沢なコンサートだ。札響のフルーティスト二人によるデュオコンサートなのだが、これはアルタスという日本のフルートメーカ-の新作発表にちなんだ無料コンサートだ。

髙橋聖純さんは、昨年札響に入団した若手である。森さんの紹介によると「名前のとおり純な性格」な人で、さらに「若手でこれだけ音が良くて指のまわる奏者はいない」ということである。

森さんはもともとアルタスフルートを長く使われているそうで、管体はプラチナ、メカ系が金勢の楽器を長い間にアルタスとの施行錯誤で自分に合うように作り上げてきたものらしい。一方髙橋さんは普段はムラマツの金製の楽器を使っているが、3日前にアルタスフルート(銀管)を渡され、今回のコンサートにのぞんだらしい。(間違っていたら指摘してください)

これも森さんのハナシによると(森さんは「ザ・フルート」(アルソ出版)にも連載をしているが、想像したとおり話し好き、話し上手である)、「彼の場合はアルタスの中では銀管の方が良い音が出ていた」「楽器を渡されてすぐに吹きこなすことは、プロでも難しいが、彼は難なくこなしている」とのこと。

さて、演奏はというと、森さんは風邪で体調が悪く、さらにはこの演奏会の前に市内の病院でコンサートをこなしてきたという多忙な状況ながら、デュオでは息の合った演奏を聴かせてくれ、非常に満足であった。

ただ、正直に話してしまうと、ここでも今まで私が森さんに抱いていた音とは違う音が奏でられており、意外な思いにとらわれていた。彼の音のイメージは、もっと肉感的で大きな音というような捕らえ方をしていたのだ。それがどういうことなのか、演奏の合間の森さん自身の解説によって、少しだけ明らかになった。彼いわく「フルートは綺麗な音が出るもの、オケに負けないくらい大きな音が出れば良いというわけではない。昔は私も、交響曲の中でも大きな音で吹いていた。ブラームスのシンフォニーを演奏しても、フルートコンチェルトと言われるような具合だった・・・・」と。私が森さんの音としてイメージしていたのは、その頃の音だったのかもしれない。(かなり省略して書いているので、彼の主旨とずれてしまっているかもしれないので、そこのところは各自修正して読んでいただきたい)

それにしても森さんもさることながら、髙橋さんの演奏はまったく素晴らしかった。森さんが褒めるのは決して身内贔屓ではないことを、その演奏から知ることができた。何と言っても音が良い、そして、からだの大きさには全く似合わない(と書くと失礼に当たるだろうが)純にして繊細な音楽を奏でてくれる。ソロのドップラーはまさに聴き入ってしまった。

お決まりのアンコールも1曲だけ演奏してくれたが(ケーラーか何かだったかな?忘れてしまった)、こちらも良い演奏であった。

このように、非常に得をした気分の演奏会であったのに、演奏終了後にハプニングがあった。何とファンと挨拶しているときに、森さんが楽器を(あれだけ改良を重ねて、最近やっと理想の笛が完成したと言っていたその楽器を)落としてしまったのだ!!! 今はただ、一日も早く楽器が直ることを祈るだけである。

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