2002年3月8日金曜日

演奏会の感想2002~ジュネス札幌室内合奏団

日時:2002年3月9日(土)18時30~
場所:札幌コンサートホール Kitara 小ホール
演奏:ジュネス札幌室内合奏団

G.Ph.テレマン(1681-1767):「ターフェルムジーク」第1集より”序曲(組曲)ホ短調”
(フルート:河崎 亜希子、山本 昭喜子
A.コレルリ(1653-1713): 合奏協奏曲第8番ト長調「クリスマス協奏曲」Op.6
(バイオリン:佐々木 啓子、成田 ナツキ)、(チェロ:貞広 典子)
J.スーク(1874-1935): 弦楽のためのセレナード変ホ長調 Op.6

ジュネス室内合奏団はJMJ(青少年音楽日本連合)の傘下で「世界の若者達が音楽を通じて理解を深め、音楽を身近なものにする」という基本精神のもと活動している団体。JMJはベルギーのブリュッセルに本部を置くFIJM(青少年音楽国際連合)の日本支部であるらしい。どうりでメンバーが皆、若い人たちなわけである。今回の出演者は20名前後だが、女性が半数以上というのもメンバーの特色かもしれない。

ジュネスの演奏を聴くのは初めてだが、メンバーのバイオリニストと、今回最初に演奏する「ターフェルムジク」のフルーティストと知り合いであったため、これを機会に聴きに行った。

アマチュアの演奏ということで、正直なところ期待と不安が半ばという状態であったが、最初の合奏の音を聴いた瞬間に、それは杞憂であることに気付かされた。メンバーの交代などもあったと推察されるが、1980年から活動を開始し今回で21回のコンサートを重ねているというだけあり、ハイレベルのアマチュア合奏団という印象だ。(もっとも他のアマチュア合奏団は知らないのだけどね)

アンサンブルの音は低弦に重心が置かれたどっしりとした音色、全体合奏部分や速いパッセージなどにおいても安定感があり音楽的な表現の幅も広い。ソロ部分や逆にゆったりとしたメロディなどの聴かせる部分などは、やはりプロの演奏や音色と比べると遜色はあるし、音程面での不安を感じる部分もあったが、それは仕方のないこと。全体的には、音楽の持つ楽しさや美しさ、曲の素晴らしさを感じさせてくれる演奏であり、充分に楽しませてもらうことができた。

本来なら、ここで感想を終えても良いのだが、せっかくなのでもう少し曲ごとに感じたことを書いてみたい。ただし、あくまでも個人的な好みに基づいた感想であることを断っておく。音楽的な解釈とか細かなことは分からない。また聴く席によっても印象は異なることも加味して読んでいただきたい。今回の私の席は2階席のど真ん中であった(キタラの小ホールは2階の方が音響が良いと思う)。

まず1曲目の「ターフェルムジーク」。これは二本のフルートとの合奏組曲と言ってよい。重々しく若干翳りを帯びた序奏から始まり、フーガやフルートのソロなどをはさみ、多彩な色彩をちりばめながら奏でられる名曲である。私の好きな曲の一つでもあり期待を込めて聴いていた。

冒頭からバランスの良い響きだ、「悪くない、いやいや、予想よりも良いではないか」と思ったと書いては失礼に当たるだろうか。コントラバスはひとり、チェロも4人だが(いや3人だったかなこの演奏は?)、低弦に重心のある音で心地よい。チェンバロが加わっているが、こちらは少し音が小さい。もう少し響いても良いとは思ったが、チェンバロの性格上そんなに大きな音は期待できない。フルートは中低音域の音が多く、柔らかくまろやかな音色で現代的なきらびやかな響きとは少し異質のもの。もともとこの曲は木管を想定して作曲されている。そういう意味では、フルート奏者の意図はこの音楽の性格を忠実に再現していると言えるかもしれない。もっとも、バランス的にフルートがもう少し前に出てきても良かったのではないかしらと思ったのだが、それは私がフルート好きだからだろう。そんなことをしたら音楽が壊れてしまうだろうから(^^;;

合奏として少し不満がないわけではない。この曲は「ターフェルムジク」の冒頭を飾る曲であり、また祝宴の開始を示すような厳かさと、期待と若干の不安がない交ぜになったような、それでいて華やかな雰囲気を有した曲である。低弦に重心を置き、縦の線を合わせてきっちりと演奏するのは好ましいものだが、一方でリズムと音楽が重くなりがちに感じた。静と動の変化の妙などをもう少し軽やかに演奏すると、洒落た感じになったのにと少し残念である。フランス風な要素とイタリア風の要素というのが、演奏解釈上どのような違いなのかまでは分らない。しかし、ある種いい加減さのような軽さが欲しかったというのは高望みであろうか。

休憩をはさんでの「クリスマス協奏曲」は、有名な曲でありながら家にCDもないので聴くのが始めて。この演奏は、先の「ターフェルムジク」とは一転して、合奏団が少しリラックスして弾いているような感じを受けた。ソリストを前に立たせての演奏であったが、合奏とソロの掛け合いも生き生きとしたもので、先に感じたリズムの重さも払拭されている。音楽の楽しさが伝わってくるような演奏であったと思う。今回の演奏で一番良かったものだ。先のリズムの重さは意図したものだったのかとふと思う。

最後の「弦楽のためのセレナード」は今までで一番大きな編成として演奏されたが、パンフレットの解説にあるように難曲であると感じた。これも聴くのが初めてなので細かなことまでは覚えていないのだが、1楽章の雰囲気は良かった。ピチカートの音色や明るい優雅な旋律が、この曲の素晴らしさを伝えてくれる。非常に得をした気分にさせてくれるのがうれしい。ところどころ和音に不安があり、崩れそうになる一歩手前で演奏しているような印象を受けるところもあったが、こういう部分はこれからの課題なのだろう。音楽というのは、速いところよりも、ゆっくりしたところの方が難しい。音色、音程などを正確にかつ音楽的に説得力のあるように演奏するというのは、基本でありながら本当に難しいものだと思う。とはいってもそれらは致命的なものでは全くなく、全体によくまとまっていて、優美な曲の持つ性格と美しさを浮き彫りにできた演奏であったと思う。

読み返してみると、少し辛口の感想になってしまったようで恐縮である。ほかに聴かれた方は違う感想を持たれていると思うし、演奏した方々も、全然違う印象であると思う。そもそも音楽の感想は、ごく個人的なものである点をご容赦願いたい。ひとつだけ付け加えさせていただくが、私としては大変に楽しめる演奏会で、終わった後に優しいものが心に残された。それを得ることは、演奏を聴く幸福以外のなにものでもないと思う。演奏に携わった方々、本当にお疲れ様でした、そしてありがとう。

なお、この演奏は3月31日(日)午後2時~3時にNHK・FM(全道放送)にて放送される予定であることを付記しておこう。

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