2004年7月5日月曜日

NHK交響楽団奏者の年収

銀行の待合室で、くたびれた(つまり、随分前の)週刊朝日を何気なくパラパラと。そうすると天下のNHK交響楽団主席指揮者の年収に関する話題が掲載されていました。

記事を鵜呑みにしますと、N響奏者の平均年収は1000万円くらい、主席指揮者となると2500万円程度にものぼり、その上バイトなどは自由、人気奏者の場合の1回あたりのレッスン料は(レッスン時間は不明)5万円にもなるのだとか。

札幌交響楽団のチェロ奏者であり、かつ組合の給与対策部長である荒木氏のハナシとはあまりにもかけ離れた給与相場(世間と比べてもだ)に少し驚いたのではありますが、こういう記事の影響で「オケの方たち、音楽関係の方たちは、さぞかし裕福」というイメージができてしまうのかなあ、などと要らぬ心配をしたりいたします。(裕福な方もいらっしゃるでしょうが)

クラシックという衰退産業は、よほど「育てる」という意識がないと、産業として自立的に成立することが難しいのだろうと思うのですが、ふと擬藤岡屋日記のOpera, a risky business?という6月24日のエントリーを思い出しました。氏のエントリーはオペラに関して、
元々、王侯貴族が庶民にもお裾分けする「エンタテイメント」というルーツを持つオペラは、社会体制の変化にも耐えて今日までその歴史を繋いできたが、成り立ちからしてそれ自身で経済的な自立をするということは殆ど不可能に見える。
と説明しています。そして、
ただ言えることは、オペラが観客やそれを取り巻く市民にどれだけ愛され、支持されているか?にその将来が委ねられていることは間違いない。
という主張の「オペラ」を「地方オケ」とか「クラシック産業」と置き換えても、似たような話にはなるのかなと思ったりします。先に紹介した荒木氏も、『オケの位置づけ論議を、市場原理だけで語るな』と題して、以下のように強く語っています。
札響規模のオーケストラが必要な事業費は年間約10億円。演奏会収入だけで賄うことは、到底不可能だ。オーケストラは自治体や民間、古くは王侯貴族の支えがあって初めて成立する存在なのだ。
擬藤岡屋日記のエントリーは
人間、パンのみで生きるのではあまりにも寂しい。
と結ばれていますが、パンを「経済合理性」と置き換えれば、全くその通りだと思います。そういう地道な努力の中で、最初のハナシに戻りますが、N響奏者の年収や境遇が構造改革されない特殊法人などにも似ていて、なんだかなあと思うのではありました。