日時:2003年11月10日 14:00~
場所:東京芸術劇場
指揮:小林 研一郎
演奏:日本フィルハーモニー交響楽団
ヴァイオリン:二村 英仁
リスト:ハンガリー狂詩曲 第2番
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン(ジプシーの歌)
ラヴェル:演奏会用狂詩曲「ツィガーヌ(ジプシー)」
モンティ:チャールダーシ
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」
コバケン+日フィルの演奏会に出かけた。リストのハンガリー狂詩曲に始まり、二村氏のヴァイオリンが3曲、そして「展覧会の絵」と親しみやすいプログラムであった。
しかし、日曜日14時のに始まる「サンデーコンサート」という気楽な雰囲気の演奏会のためか、会場が始終ざわついていてどこか緊張感に欠けていた。それは演奏中でもそうで、開放咳ならまだしも鞄やパンフレットのガサゴソする音が始終絶えない。そういう私も体調があまりよろしくなく、なかなか演奏に没頭できないで終わってしまったというのが正直な感想。
二村氏のヴァイオリンは優しく温かみのあり、それでいてなかなかに聴かせる演奏だったと思うのだけど、心には響いてこなかった。二村氏と日フィルとの相性という点ではどうだったのだろうか。「ツィゴイネルワイゼン」のような通俗名曲を技巧でブイブイ弾きまくる演奏が、二村氏のスタイルには似合わないのかもしれないとも思った。
ラヴェルやモンティは、私には始めての曲で、全くもったいないのであるが、とにかく楽しめないままに二村氏は去ってしまった。二村氏は、機会があればもっと近い席でじっくりと聴かせて貰いたい音であったことは付記しておこう。
次は「展覧会の絵」である。コバケンの展覧会なのだからとかなり期待して聴き始めた。しかし、本番であるから事故やミスは止むを得ないと思うのだが、金管群が不安だ。弱音でのアンサンブルの乱れも気になり、どことなく雑な印象を受ける。そして時々、自分の耳がおかしいのでは訝ったのだが、音程がどうもピンとこない。それも弱音での出だしの音だったり、重要な部分での音程であるだけに演奏全体の印象がぼやけてしまった。(プロのオケなので、音程が悪いということはありえないと思う。私は当日は風邪気味であったから、頭と耳がぼやけていたのだと思う。)
展覧会の絵は、強弱や緩急取り混ぜながら、最後のキエフの大門に向かって盛り上がる曲だが、最後のクライマックスも弱音での緊張が維持されてこそ壮大な感興が得られるものだ。肝心の弱音での繊細さや緻密さ、美しさに乗り切れなかったため、今日の演奏には満足できなかった。
アンコールは、何か1曲やった後に(忘れた)キエフの大門のラスト数分をもう一度演奏した。こういうアンコールもありかなとは思ったのだが、コバケンの生真面目さとサービス精神、そして音楽と日フィルへの深い愛情は感じたが、今日の演奏の印象をくつがえすものではなかった。
4月に東京に来て日フィルの演奏を聴くのはじめてであったのが、今まで数度聴いた東響と比較すると、弦の音色や雰囲気が異なっているように思えた。東響はどちらかといえば透明感が際立っているが、日フィルには音に粘性を感じ重心も低く、良い意味での雑味も感じることができる。それだけに全体のバランスが崩れてしまうといただけないというのが、今日の感想ではあった。体調の良いときに再度、コバケン+日フィルを聴いてみたい。
蛇足になるが、コバケンは3階席にいてさえ、その唸り(叫び?)声が聴こえるほどである。それでも、帰り際にクラシックファンたちが「コバケンも年をとったなあ」と感慨深げに話す声が、なぜか耳に残ったのであった。