中村勘三郎による「野田版研辰の討たれ」を観てから、歌舞伎ってなんだろうと思い、今日は書店と豊島区中央図書館をハシゴして、つらつらと歌舞伎関連の本を斜め読みです。
- 吉田弥生「江戸歌舞伎の残照」 ISBN:483557947X
- 橋本治「大江戸歌舞伎はこんなもの」筑摩書房 ISBN:4480873295
- 戸板康二監修「歌舞伎鑑賞入門」創元社 ISBN:4422700677
- 岩波講座 歌舞伎・文楽 第4巻「歌舞伎文化の諸相」 ISBN:4000107844
橋本氏いわく
歌舞伎なんていうものは、そもそもが「ルールに取仕切られた混乱のページェント」だったりもする訳
戸板氏いわく
歌舞伎の第一義は戯曲になく、俳優の演技における美の追求にあったと見なければならない
分かったような分からないような気分ですが、学者ではありませんから、このくらいの認識でよしとしましょう。今日読んだ本の中では、橋本本が秀逸です。相変わらずの橋本節ですが、色々斜め読みした中では圧倒的な分かりやすさです。特に「時代物」「世話物」「時代世話物」の概念はまさに彼ならではのものです。
Flamandさんのコメントにあった特に歌舞伎の世界は先の戦争後に存続そのものの危機的状況を迎えた
ということも気になったので簡単に調べてみました。
昭和19年3月の戦時中「高級享楽停止」の名の下に全国19の劇場が閉鎖されます。翌20年には空襲で歌舞伎座が消失、そして十五世羽座衛門の死と続きます。戦後はGHQにより封建制度を賛美するような内容の歌舞伎の上演が禁止される憂き目に会いました。これを救ったのは他ならぬマッカーサーの副官として日本語通訳を務めたフォービアン・バワーズ(来日当時二十八歳)のアメリカ陸軍少佐であったというのですから、不思議なものです。
しかし戦後においても戸板氏が指摘するように歌舞伎は古くさい、愚劣だ、見るに耐えないといふやうな意見
が多かったのだそうです。昭和24年は歌舞伎の名優を相次いで失っています。七代目幸四郎、七代目宗十郎、そして六代目尾上菊五郎です。戸板康二の「歌舞伎への招待」が発刊されたのは、そんな歌舞伎の衰退が懸念された昭和25年になるわけです。
なかなか勉強になりましたです、はい。難しいことなど考えなくても楽しめるのも歌舞伎ですが、深く知るともっと面白いのも歌舞伎でありますな。
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