- フルート・ソナタ ロ短調 作品3の2
- フルート・ソナタ ニ長調 作品2の5
- フルート・ソナタ ニ短調 作品2の2
- フルート・ソナタ ト短調 作品2の4
フルート・ソナタ ニ長調 作品3の6
- フラウト・トラヴェルソ:有田 正広
- チェンバロ:有田 千代子
- 録音:Sep-Oct 1991 中新田バッハ・ホール
- DENON COCQ-85203
プラヴェ(1700-1763)という作曲家を知っているだろうか。18世紀フランスで最高のフルート奏者と称えられ、当時あらゆる賛辞を浴びており、彼の演奏は現在の”フレンチ・フルート・スクール”の基礎となったものである。ここに納められたのは”フルートとバッソ・コンティヌオのためのソナタ集”「作品2」と「作品3」から選んだものである。(ほとんど解説書の写しだな)
有田氏は日本を代表するトラヴェルト奏者であるが、彼をして「プラヴェという音楽家はつねに私の理想でありつづけた」と本アルバム解説の冒頭に書かせている。
イタリア趣味に彩られたとかフランス様式とかは、この時代の音楽の趣向を語るときには避けて通ることのできないキーワードだが、私には、それを語るほどの音楽的知識や素養を持ち合わせてはいない。ここは、様式や背景などの難しいことを考えずに、ひたすらこの典雅な世界に浸りきってみたい。暖かさ、華麗さ、憂鬱、不安さと安堵など、たった二つの楽器が奏でる響きから、音楽の喜びというものを十分に感じることができよう。
有田氏の使うトラベルソは1735年頃にトーマ・ロットにより製作されたもので、演奏ピッチは A=400Hzである。かの有名なルイ・ロットはトーマ・ロットの末裔であるとのこと。バロック系の音楽といえば415から435Hzに設定しているのはよく耳にするが、ここではさらに低いピッチでの設定である。このピッチと木質系の暖かい、ぼやけたようでいて芯のある響きを聴いていると、体の中の不純なものが浄化されてゆくような心地よさを感じる。
響きもさることながら、この木の筒に穴があいたあだけのトラベルソ(1つのキーだけはついているようだが)をほとんど超人的な技巧で駆使する有田氏の演奏には驚ろきを禁じえない。
本アルバムは DENON BEST MASTERRS というシリーズで1700円、お買い得である。
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先に紹介した工藤重典の「バロック・名曲集」にもプラヴェのソナタ 作品2の4が納められいる。工藤氏は最近木管も使うのだが、あのアルバムでは現代フルートである。
聴き比べてみると、工藤氏の演奏が非常にクリアで軽やかな事がわかる。この違いが楽器の違いなのか、奏法の違いなのか、はたまた解釈の違いなのかは別としても、同じ曲でありながらその肌に触れる感触=皮膚感覚がまるで異なることに気づかされる。
確かに演奏スピードも違う。有田:工藤で比較すると Presto 2:50 - 2:31 Allegro 2:01 - 1:36 ほどの違いがある。まさに工藤は超絶的なスピードで疾走するスーパーカーのごとき演奏だ。いやがおうにも聴くもののテンションがあがる。工藤を聴いた後に有田の演奏を聴くと、なんともゆったりとした歩みで、わが道を行く別世界がある。
どちらが優れているという種類のものではない。バロックものを聴くスリルと楽しみ、現代楽器と古楽器との違いを楽しむ、そういう態度で接したい。
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