交響曲 第1番 ト短調 作品13 「冬の日の幻想」
指揮:ロリン・マゼール
演奏:ウィーンフィル
録音:1964(チャイコフスキー交響曲全集より)
1964年の録音であるから、マゼールが35歳ころの若かりしころの録音である。この若さにしてウィーンフィルとチャイコフスキーと全集を録音するというのだから、マゼールの早熟ぶりが伺えるというところなのだろうか。
これを聴く前に書いた、スヴェトラーノフとティルソン・トーマスの演奏を改めて聴きなおしているわけではないので、あくまでも頭に残っている印象として、比較を読んでいただきたい。
スヴェトラーノフ版をベースとしてこのチャイコフスキーの初期交響曲群を聴いているが、曲のもつ迫力はこの版であっても決して遜色ない。いやそれどころか、勢いとともに優美さを兼ね備えたチャイコフスキーになっているのではなかろうか。(その代わり、スヴェトラーノフ版のようなロシア臭はやはり薄いのだが)
マゼールは、ウィーンフィルをしっかり鳴らしきっており、それでいてフォルテッシモにおいても金管群がうるさすぎたり、シンバルの音が強すぎるような演奏になっていないところが、ウィーンフィルたるところか。低弦もしっかりとした音量で、木管のうたいを支えている。当たり前といえば当たり前の感想だが、非常にバランスの良い演奏になっていると思う。
��楽章の夢見るような美しさはどうだ。陰気な霧の多い土地とのイメージはないが、湖のほとりで、静かに鳥の囀りを聞いているような、または湖に移る月光をみるような、そんな本当にゆったりと美しい楽章である。スヴェトラーノフではちょっと、演歌調かと思わせたが、マゼール・ウィーンフィルはあくまでも上等なコニャックのような音楽を提供してくれる。2楽章最後の盛り上がりの部分の金管の響きは圧倒される思いだ。
��楽章は、スヴェトラーノフでもMTTでもピンとこない印象を受けた。以前のCD感想を読んでも余り言及がない。しかし、このマゼール版のこの楽章の素晴らしさは特筆ものか。細やかなリズムとそれを支える弦の動き、それと中間部の美しい旋律。なんと優雅に奏することか。ホルンの音色のまた良いこと。この楽章だけ取り出して聴いても十分に満足できる仕上がりではなかろうか。
��楽章の懐の大きさを感じる。オケの揺らし方も決してガリガリとやるのではなく、大きな振り子か揺りかごの中をスイングするよう。ppからフォルテにかけての感情の高まりもすごく、この楽章のもつ面白さを十分に表現しきっていおり、熱狂的なまでの仕上がりになっているといえよう。最後、テンポを落としぎみにしたところに感情の溜めがあり、壮大にして華麗な幕切れである。
もっとも、どうしてこんな盛り上がりになるのかという、解釈の問題や、曲自体が単純すぎる(!)という思いも残るのだが、まあ難しいことはとりあえず脇においておいてこの曲を楽しむのが良いかと。
ということで、若かりしマゼールに「ブラボー!」を送りたい。このCD全集が、3080円(4枚組)なのだから、何とも・・・・
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