文化とか芸術は、人間にとって欠くことのできないものなのだろうか。音楽に限らず、絵画や文学、エンターテイメントまでを含めてもいい。サブカルチャーという少々古い言葉を持ち出すまでもなく、この手のものは容易にいくつも列挙できる。
いざ有事となったとき、これらの活動は著しく制限されるだろうと思っていた。「今はそういう場合じゃないから、国民一丸となって・・・」という具合に扇動されるのだと。でも、米国へ同時多発テロの報に接し、扇動されるのではないと思い知った。個人がそういう気になれなくなってしまうのだ。理不尽な暴力により、そんな気にならなくなってしまう。
身内に不幸があって何もする気になれない、ということはある。そこまで極端ではなくとも、仕事が気になり、音楽なんて聴いてられない、という場合もある。でも、有事のときの感情というのは全く別物なのではないか、という気がして慄然としてしまった。
芸術や文化は平和でなければ育たないというものではない。過去の歴史において、戦争中でも芸術活動というのは存続しているし、むしろ利用されている場合もあることは枚挙にいとまがない。
しかし、恐怖や驚愕は生命の存続に対するシグナルであるため人間の中で最上位に位置しているらしい。トマス・ハリスの「ハンニバル」という小説の中で、「脳の中で味覚は憐憫の上位を占めている」というコメントがあるが、芸術はいったいどこに位置しているのだろうか。
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