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2002年10月26日土曜日

マクサンス・ラリュ-&アンドラシュ・アドリアン 二大巨匠の夕べ

日時:2002年10月25日 19:00~
場所:ポルトホール(浅井学園大学 北方圏情報センター)

フルート:マクサンス・ラリュ-、アンドラシュ・アドリアン ピアノ:占部由美子
フルートオーケストラ:フルート・アンサンブル・Sapporo 指揮:阿部博光

��.A.モーツアルト:ディベルティメント第15版より第二楽章 KV.287 (フルートアンサンブル)
チマローザ:2本のフルートのための協奏曲 ト長調(ラリュ-&アドリアン、フルートアンサンブル)
シューベルト:ソナチネD-dur D.384(ラリュ、ピアノ)
ドップラー:リギの思い出 op.34(Fl:ラリュ-、AltoFl:アドリアン、ピアノ)
クーラウ:2本のフルートとピアノのためのトリオ G-dur op.119(アドリアン、ピアノ)
シューベルト:即興曲 B-dur D.935(アドリアン、ピアノ)
ドップラー:リゴレットファンタジー op.38(ラリュ-&アドリアン、フルートアンサンブル)

ラリュ-とアドリアンという二大巨匠が札幌で音楽を奏でてくれた。ラリュ-とアドリアン、それに占部由美子さんのコンサートは以前も開催されたことがあるようだ。ラリュ-は1934年、アドリアンも10歳若いとは言っても1944年生まれ。70歳と60歳という年齢ではあるものの、瑞々しく素晴らしい音楽を奏でてくれた。

曲目を見ると分かるが、親しみやすく、そして心に染みる歌心に満ちた曲が選ばれている。ラリュ-の優美なる音とアドリアンの芯の通った音の二人のアンサンブルは絶妙で、息をのむばかり。いまさら、それぞれの曲の出来映えや、ラリュ-がどうの、アドリアンはどうだなどと述べることは意味をなさないような気がする。ただ二人の奏でる音楽に聴き入り、堪能し音楽に浸ることのできる時間を得たことを喜ぶばかりである。

中でも、ドップラーの「リギの思い出」という曲は、短いも中にも美しさと激しさを持った音楽で、特に印象に残った。解説によると「リギ」というのはスイスの地名、作品はフルート・ホルン・ピアノ・鐘という構成で「牧歌」という副題が付けられているとのこと。ホルンの替わりにアドリアンはアルトフルートを吹き、深く落ち着いた音色を聴かせてくれた。牧歌的な雰囲気でのフルートとアルトフルートの対話の旋律、中間部の激しさと強さ、そしてまた回帰してくる穏やかさと鐘の音色、悠久の時間と、いつまでも変わらない平和なる風景を見せられたような気にさせられた。フルートとアルトフルートのデュエットの美しい音色は今でも耳を離れない。

ところで、アドリアンは、相当茶目っ気のある方のようだ。この演奏が終わった後、彼は何とカウベルを持ってきて、鐘を鳴らしていた女性の首にかけてあげるではないか(^^)ナイス!

ラリュ-とアドリアン、そしてフルートアンサンブルによるリゴレットファンタジーも楽しい演奏であった。二人のおどけた仕草を交えた掛け合いは、本当に息が合っており心浮き立つような気にさせてくれた。編曲のせいもあると思うが、最初のチマローザの場合はバックのフルートアンサンブルが強すぎ、二人の音をほとんど聴き取ることができなかった。一方ドップラーの場合は、伴奏と二人のソロ部分の対比が適切で、フルートデュエットを引立てるような音楽になっていたと思う。

それにしても、このデュエットの完成度といったらどうだろう。恐らく二人が合わせたことなど、今回の演奏会においては数時間だけだろうに、早いパッセージだろうが何だろうが、ビタリとリズムも音も合うその心地よさよ。

アンコールは、曲名は分からなかったがショスタコービッチの小品(ラリュ-&アドリアン、ピアノ)と、フォーレのシシリエンヌ(ラリュ-&アドリアン、フルートアンサンブル)。ショスタコービッチの曲は、明るく親しみやすい表装を装いながらも、彼特有の諧謔性が一瞬のフレーズから鈍い光とともに抉り出されるかのようで、思わずその瞬間は背筋に電撃が走るかのような感触を覚えた。

今回の曲目はフルートのヴィルトオーゾ性を際立たせるような曲ではなく、フルートファンではなくても親しめるような内容であったように思うが、逆にちょっと物足りない印象も受けた。

ラリュ-とアドリアンが、この先札幌のステージに立つことはもうないと思う。演奏会は良いものだったと思うのだが、なぜに、ふたり一緒で、しかもフルート・アンサンブルとの共演という企画になったのかは、実のところ疑問であった。

最後にフルート・アンサンブル・Sapporoは、これを機会に札幌のプロフルーティストにより編成されたものとのこと。札幌フルート協会の小松昭五さん、佐々木信浩さん、松沢幸司さんの他は皆女性。ドップラーではピッコロも吹かれた蛎崎路子さん、中央では細野雅子さん、横には高橋紫さん、北沢里奈さん、後列中央に実藤美保さん、アルトフルートでは楢崎容子さん、バスフルートでは前川茂さんなどなど・・札幌のフルート界では錚々たるメンバーであった。



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