2003年6月5日木曜日

アバド/ワーグナー・アルバム

1 歌劇《タンホイザー》:序曲
2 舞台神聖祭典劇《パルジファル》:第1幕への前奏曲
・舞台神聖祭典劇《パルジファル》:第3幕からの組曲
   3-4 聖金曜日の奇跡 5 鳴り響く鐘と騎士たちの入場
   6 パルジファルが聖槍を高く掲げる
7-8 楽劇《トリスタンとイゾルデ》:前奏曲と愛の死
9 楽劇《ワルキューレ》:ヴァルキューレの騎行(国内盤のみのボーナストラック)

クラウディオ・アバド 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
スウェーデン放送合唱団
2000年11月、2003年3月
DG UCCG1149(国内盤)

2000年から2002年にかけてのアバドとベルリンフィルによるワーグナーの演奏である。2000年のベルリン来日の際に《トリスタンとイゾルデ》を演奏したので聴きに行かれた方も多いだろう。私はその頃ワーグナーなど聴かない人間だったので、あまり興味が沸かなかったのだが、考えてみれば惜しいことをしたものだ。(もっとも時間とお金ともなかったとは思うが・・・)

ここに収録されているのは《パルジファル》前奏曲と《トリスタンとイゾルデ》そしてヴァルキューレが2000年11月ベルリンの、残りが2003年3月のザルツブルク、祝祭大劇場で録音されたものらしい。

アバドのワーグナーが世間でどのような評価を得ているのかは不勉強にして知らないが、この盤を聴く限りにおいては、非情に高度なオーケストレーションの技術に裏打ちされた完成度の高い演奏のように思える。それに艶めかしさやワーグナー独特の濃さよりも、何か大切なものを削りながら音を構築しているような、ある種悲愴感が漂うようにも思える。それは選曲によるのか、それとも、この時期アバドが病苦と戦いながら演奏活動をしていたという事実が頭に刷り込まれているからだろうか。それゆえというべきか、旋律の甘美さや美しさは陶然とするがごときだ。

《トリスタンとイゾルデ》と、ヴァルキューレはオーケストラヴァージョンなのが残念である。イゾルデのラストの慄然とするような歌唱や、ヴァルキューレの螺旋のように渦巻く叫び声を聴けないのは、この曲を聴く楽しみを半減させてしまってはいる。頭の中で、誰かの歌唱を補完しながら聴いてしまうのだが、最初はわさびの入らない上等の鮨を食わされているような思いであった。合唱部分をヴァイオリンなどが代役を務めているのだが、ヴァルキューレなどは少し滑稽に聴こえなくもない。

《パルジファル》第3幕も、騎士たちの合唱は入っているのだが、これに続く死を願うアンフォルタスと、彼を聖槍で救うパルジファルの歌は、やはりオーケストラヴァージョンになってしまっている。

オーケストラヴァージョンとして何度か聴けば、これほど密度の高い演奏というのもそうあるものではないと思わせはする、音響的な分厚さはさすがというべきか。しかしながら、セレクト盤なのでワーグナーを聴き通したいう満足感と感動は得られず、返って鰻の匂いだけかがされてしまったような気持は残るのであるが。