2004年12月9日木曜日

リチャード・ミニター:「なぜ企業はシェアで失敗するのか」

何気なく読み始めたこの本だったのですが、企業の「シェア至上主義」に疑義を唱え、マーケットにおけるシェアは、利益とは何の関係もないことを、嫌というほどに思い知らせてくれるものでした。

ビジネス本として、非常に卓越した内容でありますので、マーケット・シェアと利益率に少しでも感心のあるビジネスマンや経営者は一読の価値はあると思います。この本を読むと世のCEOを初めとして「マーケット・シェアの拡大」という、一種宗教にも誓い妄想に取り付かれている愚が明らかになります。

私の属する業界もしかりで、会社の期首や期央の経営会議で問題になるのは、まずは総売上高と経常利益。「利益率」という概念もないわけではありませんが、量重視で、量を確保すれば社員を賄う原資は得られるという幻想にとらわれているような気がします。あと「赤字覚悟」で仕事をとってシェアを高めれば、そのうちコストリーダーになれるというユメを見ているわけです。なんたって利益率ときたら限りなくゼロに近い一桁という成熟産業ですから、厳しい競争にしのぎを削るのは当然ではあるのですが、「そのうち」ってことの見込みもまた、利益率と同じくらいのものでしかないわけです。

2004年9月号のハーバード・ビジネス・レビュ(日本版)は、『「利益率」の経営 低収益体質からの脱却』というテーマで論文を掲載していましたし、高収益率企業でかつ、マーケットリーダーであるデルの本も読んだばかりでしたので、採算に合わない仕事からどうやって利益を叩きだすか、そもそも、その仕事をやるべきなのかという判断を迫られる業務をしている関係上、テーマ的にもヒトゴトではなく、理想と現実の違いにゲンナリしてしまうのも事実。

いったい、わが社幹部連中は何を考えて企業経営をしているのか、何を基準として経営判断をしているのか、小一時間ほど問い詰めたい気になります。

ちなみに著者のリチャード・ミニターは、ウォールストリート・ジャーナル・ヨーロッパ紙の元エディター。現在はジャーナリストとして、ウォールストリート・ジャーナル紙やワシントン・ポスト紙、ニュー ヨーク・タイムズ紙、サンデー・タイムズ紙のほか、世界中の有力経済専門紙を中心に寄稿している方。

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