「iCON/スティーブ・ジョブス 偶像復活」を以前読んでいますから、本書から目新しい情報は得られません。ジョブスについて知っている人に本書は二番煎じの、初めて読む人には短い時間でのガイダンスなりえましょう。
既に充分に紹介されているジョブスのビジネスにおける「手口」とか「やり方」を紹介し、テーマごとに「貴方にもできそうなこと」を自己啓発所風にまとめているところが本書の特徴。ソニーの井深大や松下の松下幸之助などを、刺身のツマのように引き合いを出していますが、中途半端で雑な印象を受けます。
誰もがジョブスに敬意を示し、ジョブスに憧れたとしてもジョブスには到底なれない。ジョブスの前にジョブスなく、ジョブスの後にもジョブスなしです。
彼の性格を端的に表現する表現。
腕に覚えのないサラリーマンでは、ジョブスと働くのはムリだ。たちまち切って捨てられるだろう。ジョブスは、鋭利な刃物のような切れ味の人間だから、敵をなぎ倒し、問題を解決する過程で、まわりの人間まで切り刻むことがしばしばである。よくも悪くも、これがジョブス流だ。(P.70)
あるいは、
能力や野心が大きければ大きいほど、人はジョブスに惹きつけられる。そしてドアの内側に入れば、「ジョブス以外の人の下では働きたくない」と言い切る。一方で、ドアの外側に追い出されたら、「二度と絶対ジョブスとは働きたくない」と断言する。(P.91)
なぜ、人はジョブスに惹かれ、ジョブスから離れるのか。なぜビジネスの場で、ジョブスは相手を圧倒的に魅了してしまうのか。それはジョブスが、我々がかつて見たこともないようなモノを見せてくれることと、何かとてつもなくワクワクさせてくれるものを絶対に実現させるのだという強烈な意志があること。
ジョブスを「嫌い」「嫌な奴」と評する人は多いと思います。「野心」もなく凡百の才能しかない者が、いったいジョブスから何を学べるというのでしょう。絶対に実現させたいモノあるいはコトがあるのか。彼を知ることは、働くことの源泉に対する問いかけで、小手先の技術を幾ら並べたり、彼のやり口の好悪を評しても詮無いことではないかと。
◇
本書はジョブスの有名な2005年スタンフォード大学での基調講演(→ Text of Steve Jobs' Commencement address(2005)~STNFORD NEWS SERVICE)の言葉で締めくくっています。この演説は非常に感動的で、本書を読むよりも余程価値があります。
有名な「今日が人生最後の日であったら」の部分。
for the past 33 years, I have looked in the mirror every morning and asked myself: "If today were the last day of my life, would I want to do what I am about to do today?" And whenever the answer has been "No" for too many days in a row, I know I need to change something.
スタンフォードの学生に贈るメッセージ。
Your time is limited, so don't waste it living someone else's life. Don't be trapped by dogma ? which is living with the results of other people's thinking. Don't let the noise of others' opinions drown out your own inner voice. And most important, have the courage to follow your heart and intuition. They somehow already know what you truly want to become. Everything else is secondary.
最後は下記の決意表明で結ばれます。
Stay Hungry. Stay Foolish. And I have always wished that for myself.
日本語訳もネットを探すとイロイロあります。Googleでトップに出るのはここ。You Tubeの動画は下記。
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