2004年4月11日日曜日

ジュリーニ/LOP:ブラームス交響曲第1番









  • 指揮:カルロ・マリア・ジュリーニ

  • 演奏:ロサンゼルス・フィルハーモニー管

  • 録音:1981年11月



ジュリーニ/LOPによるブラームス交響曲第1番は名演であるとの評判が高く、今年1月に再発売された盤です。

ジュリーニの演奏ですからテンポはゆったりとしています、というかかなり遅いです。第一楽章が19分弱、第ニ楽章が10分半、第三楽章が5分、そして第四楽章は18分半です。しかしこの遅いテンポで丁寧に歌われるブラームスは格別な味わいで、堂々たる風格を有しています。最後まで聴いていると、何か人生の長い旅路を終えてきたような境地と至福感にまで達してしまいます。



ゆったりしたテンポではあるのですが、弛緩したり生ぬるい演奏では全くありません。第一楽章は冒頭から音響の迫力は物凄く、特にティンパニの強いアクセントをもった強打が印象的です。しかしこれとて、ただ強いだけではなく微妙なニュアンスの違いを叩き分けています。打楽器と重厚なオケが一楽章の持つ暗さや悲愴感を際立たせています。


翻って第二楽章のAndante sostenutoは暗さと明るさを兼ね備えた美しい楽章です。この「田園風」楽章でのジュリーニのオケの唄わせ方には陶然としてしまいます。第二楽章の7分頃に現れるソロ・ヴァイオリンの部分など、ヴァイオリン・コンチェルトを聴いているような気にさえさせられます。続いてのヴァイオリンと木管が寄り添うように唄うところは特に格別で、こうなるとコンチェルトではなくオペラの一幕と言ってもいいかもしれません、ここだけ何度も聴きたくなってしまうほどです。


第三楽章は更に「幸せ感」が高まっていきます。しかし、あざとい表現とか煽るような表現は聴こえません。第一楽章のティンパニの強打も昔のことのように思えます。第三楽章は短い間奏曲のようで、再び壮大な悲痛を予告する第四楽章に受け継がれますが、この楽章はとりわけ見事です。


ブラームスが描いた音楽も素晴らしいのでしょうが、ジュリーニの演奏は実に説得力があります。ティンパニの強打の意味もはっきりと分かり、かの有名なホルンとフルートが奏でる旋律が現れる頃(3分半)には体がブラームスで満たされてしまっています。主部のベートーベン第9の歓喜の主題に似た第一主題を聴くいていると、まさにこれは形を変えた、ベートーベンよりも穏やかで静かな、しかし内に秘めた熱情では負けない歓喜であることが、しみじみと分かります。いやはや本当に美しい旋律です、完全にブラームスが効いてしまっています。ジュリーニのテンポで聴きますと、ブラームスが非常に大人びて聴こえます。感情をむき出しにする直情型の演奏とは異質のもので、それでいて激しいという恐るべき音楽です。

中間部のたたみかけるかのような音響は、ブラームスの複雑な感情(喜び、怒り、嫉妬、絶望、そして達観)が全て詰まっているかのようです。故にラストに向けての感情の解放は静かにそして熱く、一人静かに固い拳を握り締めるがごときです。ブラボー!

(CDと同時進行的にレビュを書くと、こういう直情型支離滅裂文章になってしまいますね・・・)