��日の新聞報道ほかによると福岡地裁(亀川清長裁判長)は、小泉首相の就任後初めての靖国神社参拝について違憲と判断したそうです。首相の靖国参拝は全国6地裁で起訴されており、今回は3番目の判決で始めての違憲判断になったものです。福岡地裁に訴えを起こしていたのは、九州や山口県などの宗教関係者、在日韓国・朝鮮人ら211人。
『参拝は公的なもので、憲法で禁止された宗教的活動にあたる
』とした判決の骨子は以下。
- (小泉首相は)参拝後、総理として参拝した旨を述べており、総理の職務執行と認められる
- 宗教とかかわり合いを持つことは否定できない
- 自民党や内閣からも強い反対意見があり、国民の間でも消極的意見が少なくなかった。一般人の意識では、参拝を単に戦没者の追悼行事と評価しているとはいえない
- 戦没者追悼場所としては必ずしも適切でない靖国神社を4回も参拝したことに照らせば、憲法上の問題があることを承知しつつ、あえて政治的意図に基づいて参拝を行った
- 参拝が神道の教義を広める宗教施設である靖国神社を援助、助長する効果をもたらした
- 社会通念に従って客観的に判断すると、憲法で禁止される宗教的活動にあたる
- 靖国参拝は合憲性について十分な論議も経ないまま繰り返されており、裁判所が違憲性についての判断を回避すれば、同様の行為が繰り返されることになる
憲法20条3項の政教分離には違反しているとしましたが、原告への慰謝料請求については、『参拝で原告らの信教の自由を侵害したとはいえない
』として棄却しています。
さて、これに対する大手新聞の8日の社説を引用しておきましょう。
朝日新聞 社説は『首相がこだわる靖国神社とはどんなところなのか
』と靖国神社成立の歴史と『軍国主義の精神的な支柱という役割
』に言及し、
- 日本国憲法が国は宗教的活動をしてはならないと戒めているのは、そうした過去の反省に立っている
- (伊勢神宮参拝は)違憲の疑いがあるが、靖国神社が背負う歴史を見れば同列には論じられない
- 個人的心情だと開きなおる前に自分の立場を考えなければならない
- 首相が参拝すれば、それは靖国神社を特別扱いし、援助していると見られても仕方がない
とした上で『憲法違反という司法の警鐘に素直に耳を傾けるべきだ
』と結んでいます。
朝日として当然の論理でしょう。
一方、読売新聞は朝日の否定した歴代首相の靖国参拝に関する訴訟事例と伊勢神宮参拝などに簡単に触れながら、以下のような論旨を展開します。
- 首相の靖国神社参拝は戦後も、伊勢神宮参拝などと同様、日本の伝統や慣習に基づいて歴代首相が行ってきた、ごく自然の儀礼的行事
- なぜ靖国神社参拝に限って、近年になって違憲かどうかが問題にされるようになったのか
- 小泉首相の靖国神社参拝を「政治的意図」とする今回の判決自体が、政治的性格を帯びた内容
と判決に真っ向から疑問を呈しています。
さて、最後は産経新聞です。まず『これまでの判例を著しく曲解した判
』と冒頭から強い語調で地裁判決を非難し、
- (首相の参拝によりその年の終戦記念日の参拝者が前年の2倍になったことに対し)参拝者が増えたのは結果的にそうなったのであり、首相が事前にそれを意図して参拝したわけではない
- 重大な判例違反
- 福岡地裁の違憲判断を推し進めていくと[...]恒例の伊勢神宮参拝も憲法違反に問われることになる
- 福岡地裁の判決は、特定の主義主張に偏っている
- 福岡靖国訴訟は、首相の靖国参拝に反対する僧侶や牧師、市民運動家、在日韓国・朝鮮人らが全国各地で起こしている靖国訴訟の一つ
- 一連の訴訟は、裁判を利用した一種の政治運動
としており、読売と同様に特定の団体の意向に基づく政治的色合いの判決だと結論付けています。
読む前から結論の分ってしまう社説というのも、げんなりしてしまいます。
読売と産経は政治色が強いと批判しますが、靖国参拝自体が政治色の強いものです。外圧とかマイノリティとかを論じる気はしませんが、福岡地裁の亀川裁判長その人が、今後政治的どう影響されてゆくのか(あるいは司法の独立性を維持し続けられるのか)そこら当たりを報道は追求していてもらいたいものです。
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【過去の意見箱】
2001 08/14 小泉首相の靖国神社 電撃参拝
2001 08/14 歴史認識の違いと他国の干渉
2001 08/15 予想とおりの反日感情
2001 08/15 13日の参拝と小泉首相の公約
2001 08/16 靖国神社と東京裁判
2003 01/14 小泉首相の靖国神社参拝
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