目白バ・ロック音楽祭の目玉にひとつ、トッパンホールで開催された、エンリコ・ガッティのヴァイオリン・コンチェルト編を聴いてきました。
リクレアツィオン・ダルカディアは日本人による、イタリア・バロック・アンサンブルとしてヨーロッパ各地で活動している団体らしく(公式ブログ→http://ricrearca.exblog.jp/)、とても楽しみにしていた演奏会でした。
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エンリコ・ガッティ&リクレアツィオン・ダルカディア
- ガルッピ:4声のコンチェルト第2番 ト長調
- ヴィヴァルディ:ヴァイオリン・コンチェルト作品3-9 ニ長調
- タルティーニ:コンチェルト D.120 変ロ長調
- コレッリ:4声のフーガ Anh.15
- コレッリ:コンチェルト・グロッソ作品6-9 ヘ長調
- ボンポルティ:ヴァイオリン独奏付4声のコンチェルト ヘ長調 作品11の5
- ヴァイヴァルディ:ヴァイオリン・コンチェルト作品3-3 ト長調
イタリア・ヴァイオリンの芸術 2 「コンチェルト編」
- 2007年6月9日(日)14:00 開演(13:30 開場) トッパンホール
- 〔独奏〕エンリコ・ガッティ(バロックヴァイオリン)
- 〔器楽〕アンサンブル・リクレアツィオン・ダルカディア
- 松永綾子(ヴァイオリン) 渡邊さとみ(ヴァイオリン)
- 山口幸恵(ヴィオラ)
- 懸田貴嗣(チェロ) 西山信二(ヴィオローネ)
- 渡邊 孝(チェンバロ&オルガン)
そんなガッティの演奏会、前回はベタな褒め方をしてしまいましたので、今回は冷静になって書きましょう。
立教大学において噂に違わない美音を聴かせてくれたガッティでしたが、今日はコンチェルトということで、ガッティ色が若干殺がれたように最初は感じられました。アンサンブルをつとめるリクレアツィオン・ダルカディアも実力の団体なのですが、それでもバイオリンの音色の差はいかんともしがたく*1)。ガッティの突き抜けた青空のような明るさと輝きの前では、少しくすんだ曇り空という程の違いがある。時々奏でられるガッティのソロは、相も変らぬ美音でありましたが、彼の演奏を聴くという意味においては立教大学でのコンサートに軍配が上がったといえましょうか。
とは言うものの、アンサンブルが最初は少し「重い」と感じたのは、おそらくは私の聴衆としての未熟さと偏見でしょう。今日のコンサートを楽しめなかったかといえば、そんなことは全くなく、ガルッピに始まりヴィヴァルディ、タルティーニ、コレッリ、ボンポルティと、どの曲も確かに「どこまでも典雅なバロックの世界」以外の何ものでもないものの、それぞれが、それぞれに美しく、音楽に何の気負いもなく向き合え、そして身を委ねられる快感を充分に味わえるものでした。
こうしてバロックの作曲家を聴き比べてみますと、ヴィヴァルディの音楽は他の作曲家とはやはり別格であると実感。ヘタな例えを凝りもせずに敢えてするならば*2)、良く冷えたスプマンテの粒の細かい泡立ちとでも言いましょうか。心がウキウキとし、そして少し急かされるかのような期待を込めたざわめきさえ覚えるのです。こんなキモチにさせる作曲家は、他には余りいませんね。そしてガッティは、そんな音楽を、あまりわざとらしくもなく、ごくサラリと、そして鮮やかなパレットで描ききります。
良く聴いてみれば、リクレアツィオン・ダルカディアは底も厚く、ざっくりとした中にも落ち着きとキレの良さを持っています、渡邊氏の通奏低音も落ち着いた響きで、しっかりとガッティのバイオリンを支えてはいましたか。チェロの懸田氏の演奏も随所で印象的で好感が持てました。
それにしてもガッティです。やはりガッティです。例えばヴィヴァルディの作品3-9(RV 230)の第二楽章Larghettoの歌い方!ヘタな演奏で聴いたら結構つまんないと思えるような曲でも、ガッティにかかると、あたかもヴィヴァルディ一級のオペラ・アリアを思わせます。この人は、テクニカルなAllegroな楽章よりも、こういう楽章の方が圧倒的に聴かせますね。いえテクニックもありますが、メカニックで凄いという気にはなりません。
タルティーニでは編成が少ない分、ガッティ節を堪能し、アンコールのヴィヴァルディでは、もはや声も出ず、感涙ものでありました*3)。
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- いや、考えてみればコンチェルトというとでありますし、リクレアツィオン・ダルカディアの演奏を聴くのは今回が初めてですから、こういう印象的な感想は的外れな気もします。今度機会があれば、ゆっくり、この団体の演奏も聴いてみたいと思っています。
- #Credoのkimataさん、スンマヘン、またやってしまいました・・・(^^;;; TBさせてもらいます。
- ・・・て、またベタな感想になってしまった・・・か?
いえいえ、私も茶化すつもりなんかないですよ(笑)。
返信削除本当にガッティの美音はどんな修辞を尽くしてもいい気がしますし、言葉では言い尽くせない価値があります。
私はそれがうまくできないので羨ましいのです。
ソナタ編のほうが、たしかにガッティの美質がよくわかりましたね。そういう意味で私も無理して行って良かったです。昨日のトッパンホールだけだと、目白という場所のイメージはすこぶる悪いものになるところでした。。。
同じく、あのヴィヴァルディのLarghettoは感涙モノでした。
毎度、コメントありがとうございます~。。・。☆
返信削除演奏は上に書いたとおり、Ricreation d'Arcadia もいい団体だと思いますよ。公式ブログみんな読んでしまいました。:..。♡*゜
私もこれで、myメジログは終了かもしれません¨゜゜・*:..。
トッパンホールは、確かに酷い場所にありますよね。目白は椿山荘や学習院あたりを崖っぷちとする丘陵世界ですが、江戸川橋とか飯田橋は、ぐっと下がってもう神田川沿いですからね。
こんにちは。
返信削除アンサンブルが最初「重い」かなというの、私も実は感じました。やはり、編成が小さく歌謡性もたっぷりなタルティーニあたりで全体のテンションも乗ってきたような…。
ただ、最初のうちは「ガッティらしさ」を無意識に探していたせいもあったかもしれません。kimataさんも書かれているようにチャキチャキした曲だとどうもその「らしさ」が見つからないので、アレ?という。
しかしトッパンホール、評判悪いですね…。確かに目白という「バ」を楽しむというコンセプトからは外れてくるかもしれません。