歌舞伎座夜の部を観劇してくる。演目は仁左衛門の「仮名手本忠臣蔵 五段目、六段目」と幸四郎の「梅雨小袖昔八丈 髪結新三」。久しぶりの歌舞伎座なので、感想を書こうと思っても「いやァ~、やっぱり歌舞伎って面白いですね」というような、やる気のない小学生みたいな感想しか浮かばない。どなたかも書かれていたが、無理を承知で書くことを続けないと何も表現できなくなるようだ。
この有名な演目だが、歌舞伎トーシローの私にとっては筋を知るのも、観るのも今日が初めて。幸四郎の新三については、ネット上の感想を読むと否定的な意見が多いようだ。私は他の新三は知らないので、これでも充分に楽しめた。そして、こういう演目を心から楽しいと思っている自分に驚いたりする。忠臣蔵は熱演ではあったが、初めて観るために印象が薄い、というか、充分に咀嚼できない。二度三度と見ると違うのだと思う。
昼の部の感想なども読んでいると、無性にまた歌舞伎座に行きたくなる。気を許すと寝てしまうのだが、それでも、あの空間の魔力には抗えない・・・。開演前とか休憩時間に鯛焼きの焼ける甘ったるい匂いをかいでいると理由を越えた至福感に包まれる。
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桐野夏生氏の「OUT」を読み始めたが、彼女のグイグイ引っ張る筆致に魅かれる半面、読むのが辛い。どうして彼女の作品は、とことん救いのないところから出発するのだろう。この小説に解放と解決はあるのか、と少し不安になる。高村薫氏をはじめて読んだときも思ったが、桐野氏って本当に女性作家なの?いや、いや、女性しか書けないか、やっぱりああいう作品は。