東京オペラシティでコンサートホールで開催された、世界的に人気のカウンター・テナー歌手 フランコ・ファジョーリのコンサートに行ってきました。来日公演は、オールヘンデルプログラムで、バックをヴェニス・バロック・オーケストラがつとめます。
私も期待大でこのコンサートにのぞみましたが、いまだ興奮さめやらずといったところ。最初から最後まで圧倒的な内容でありました。
演目最期のcrude furieを歌い終わった後の、歌舞伎かフラメンコか、いやタンゴか!と思わせるような、タダダン!!の足踏みにも思わずブラボー!
3曲のアンコール後の、ほとんど全員かと思えるほどのスタンディング・オーベーションとブラボーの嵐。古楽系では、
2014年4月のジャルスキー以来、待ちに待ったスーパースターであり、もはや今回の公演は開催と同時に「伝説」と化したのではないでしょうか。
感想を書こうにも、何から書いて良いのかも分からないので、そのうち考えがまとまれば追記します。
多少被りますけど、追記です。
フランコ・ファジョーリという名前を知ったのは、大方のファンと同様にYouTubeでの「アルタセルセ」の動画でした。これについては、もはや詳しく書くことなどありません。ネットに山と情報があります。
自分も当時(2013年の頃です)、何気なく音楽クラスタを巡っていて見つけたのだと思います。6分程のアリアを聴いた後、茫然となりました。「一体今聴いたのは何だったのか!!」と理解を越えた衝撃を受け、繰返し映像を観ました。まるで大島弓子の「綿の国星」ばりのカツラに歌舞伎のようなドーラン。そして信じられないばかりの音域の歌声。すべてが常識をはずれていました。
その後、ネットに転がる「アルタセルセ」と「ファジョーリ」の映像を探しては聴き、CDを買い、やはり満足できずにDVDを買うという普通にミーハーな道を辿りましす。そして、バロック・オペラという、多少アブナイ世界があるということや、バロックダンスという分野があることを始めて知ったのも、全てはこれがきっかけでした。
熱狂的なファンが生まれるのも分かります。彼の歌声は「情」に訴えかける部分が多いように思えます。他のカウンター・テナー歌手、そう、フィリップ・ジャルスキーの方が技量的にも、当時は名声的にもあったのではないでしょうか。しかし、比べてしまうとジャルスキーはいわゆる優等生なですね。歌声においてもスタイルにおいても。だから二枚目半的なファジョーリの方が、世の習いの通り、どうしても魅力的に見える。
「アルタセルセ」では完全にジャルスキーを食っていて、まさにファジョーリの舞台、公演そのものが「事件」であったのだと思います。
そんな彼ですから、期待も大きかったのですけど、それを全く裏切らない演奏会でありました。甘い歌声も、超絶的な技量も、余すことなく、おそらく絶頂期の、超一流カウンターテナーの歌声を聴かれたことは、この上ない僥倖でした。
アンコールで、舞台2階席からの熱烈なファンの要望に応て、アルタセルセからの「Vo solcando un mar crudele 」を唄ったのも「事件」でしょうか。オケは用意していませんでしたから、チェンバロで音程を軽く合わせてからのアカペラ。唄う前に何度も「これは用意していませんでしたから」と言い訳していたように、多少音程は怪しいところがあったでしょうけど、そんなことはどうでもよく、思い出すだけに鳥肌ものです。
最後はヘンデルの歌劇「リナルド」から「Lascia ch'io pianga」が唄われました。会場の皆さんにもご一緒にみたいな感じで、ステージ前の方から合唱になったのには驚きました。「え~?みんな歌えるの?」みたいな。一緒に行った妻は歌ってましたけどね(笑)。
こんな演奏会ですから、最後はオール・スタンディング・オーベーションとブラボーの嵐。どこの巨匠の引退コンサートかと思わせるほど(比較が違うか)。まさに、この来日公演そのものが「伝説」となった日でありました。