W・ベネットによるヘンデルのフルートソナタ集です。ベネットはギリス出身のフルート界を代表する名手です。かなり以前ですが、実演にも何度か接したことがあり「端正」とも表現される演奏スタイルにいたく感銘を受けたものです。
このヘンデルのソナタ集も、独特の深みのある音色と教科書のような正確さで淡々と演奏されています。
ベネットはM・モイーズやランパル、J・ギルバートなどに師事しており、いわゆる正統派の演奏家ということになるのでしょうか。先ほど「端正」という表現を使いましたが、音色にもクセやいやらしいところが無く、また音楽の解釈においてもあざとさなどを感じることは全くありません。
音色も明るく柔らかなでありながら、どこかコクのある響きです。「明るい」と言っても、楽天的な華やかさよりも明晰さを感じる方向で、どこか「教授」とでも評したくなる雰囲気があります。さぞかし実生活においては超真面目人か変人であるのではないかと想像しているのですが実際はどうなのでしょう。
さて、そのようなベネットですから演奏には文句の付けるところなどどこにもないのですが、何か物足りないと感じてしまうことも認めざるを得ません。それでも繰り返し演奏を聴いていると、抑制された表現の中に秘められたものが閃くように現れる瞬間があり、静かな感興を覚えることができます。
そういうわけで、こういう盤を聴いていると、フルートでも練習せねばという義務感だけは湧き上がってはきます。そういえばこの曲集の中のソナタ ホ短調でも吹いてみるかなとか・・・
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